【"見えぬ月を席中に描き出す" 】

樹齢100年を超える黒松の老木を手に入れました。 
文人盆栽はその基準が難しく、"細く下枝のないひょろひょろとした木"
が文人樹だと勘違いされる方や、プロですら解釈が出来ずにいる面々もあり、
「究極の盆栽」と評した古人の想いがわかります。 
この樹は、荒ぶれた幹肌、捻る様な立ち上がりの腰部分、
捻転する幹に見える枝が落ちた跡のサバ姿、
そして樹冠と僅かな"落ち枝"で構成された空間ある樹相。
これ以上"引き算"のしようがない身形、まさに文人盆栽の真骨頂だと思います。 
文人盆栽は飄逸とした姿の裏側に、厳しく果てし無く永く生き抜いた足跡が感じられるもので、
決して昨日針金技で創出出来るものではありません。 

今回この樹を使って「掛け軸を使わない席飾り」をしてみました。 

老い立つ如き老松、その樹下に佇み松を仰ぐ古老。
禅の問答や古詩に登場する景趣を樹と木彫のみで表現してみました。 
一枚板の地板に双方を載せて飾ってみましたが、僅かな"間"がきつくダメでした。 

詩情を湛える飾りは数センチの"間"や高さが、
そこにある「心地良い緊張感」的な空間を創り上げます。
「空間有美」とはよく言ったものですね。