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盆栽歴49年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

【後期展へ!】

令和初の国風盆栽展も 前期展が終わり13日から後期展となります。
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今回は 宮内庁より名樹「君が代」と 尾張焼の名器が出陳され、花を添えています。
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私見ではありますが、今回の展示は この数年の中で一番レベルの高いものになったと思います。
それぞれの樹の完成度・樹格・古色・久しぶりに “さすがは国風展 ”といった感です。
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大型名木の部門でも最高賞の「国風賞」は、比肩する樹が多くあり、中品部門・小品部門に至っては、私から見れば どれもが国風賞でした。
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後期展では、羽生雨竹亭の盆栽教室に通う 小学校6年生の清水ちえりちゃんが、史上最年少で国風展に入選しました!
受験で大変な中、一生懸命手入れをして見事に夢を叶えましたので、皆さんも是非ご覧になってください!


【岐路に立つ 盆栽業界の在り方・売店の格差鮮明に】

日本の盆栽界最大のイベント「国風盆栽展」が8日開幕しました。
これに併せて 上野グリーンクラブでは、国風展に併催した売店「立春盆栽大市」が同時に始まりました!
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北海道から九州まで、全国の有数盆栽園が、同所に出店しています。
今回は「コロナウィルス災禍」の影響で、アジア特に中国からの本展来日が10%まで減少するという異常事態と言える大市となりました。
この5~7年、業界の販路は 大きく中国盆栽界に頼っています。
極端に言えば業界の年間取り扱い高の50%以上が中国と言っても過言ない程です。
特に全国の優良樹が集まるこの催事は、中国客の動向で悲喜交々の数年間だった事も事実です。
しかし、今回は初日を終えた中でも、中国愛好家・バイヤーは 僅か!
「当てが外れた!」と嘆く盆栽園の多いこと!
私の店も 勿論多くの中国からのオーダーに応える数年でしたが、私は以前より 後輩たちに
「どんな時も日本の愛好家を大切に!はじめは小さなお付き合いでも一生のお付き合いの出会いとしての国風展であるように!」
と、目先の商売に囚われて“大切なもの”を見失うことのないように伝えてきたつもりです。
今回は、その姿勢に対する明暗がはっきりと浮かび上がりました。
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おかげさまで、小店は 幅広いジャンルの皆様にお応えで知るような品揃えと、
盆栽教室・国風展出品等の皆様との交流の会「玄虹会」などの活動をさせて頂いている事で、初日も多くのご用命を頂戴しました。
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100軒を超える出店盆栽園、中々 目が開かない(販売が叶わない)店も目立ちました。
私の下で10年の刻を過ごし独立した子も出店を片隅で出させて頂きましたが、当初より
「目の前にいらっしゃる愛好家の方に 自分の“分”をわきまえた素直で丁寧な応対を」
の申し付けに従ってくれたせいか、初日で350万という商いとなったようです。
その子に言いました。
「見てごらん。これだけの店が軒を連ねているが、並んでいる盆栽や品物を見て “これはあの人の店”とわかる店がどれほどあるか?」
大切なのは、売れるなら何でも扱う、ではなく「私の描く店はこんな店です」と、自分と愛好家を繋ぐ 特色が必要だという事です。
どんな店も 全部を叶えられる店はありません。
それぞれの店の色を好まれる愛好家の皆さんが、自分が望む店を選ぶのです。
ある中堅業者が言いました。
「売れないなあ、中国がもっときてくれればいいのになあ」と。
心で思いました。
“ 自分を振り返って足元をもっと見て”と。
16日まで、ここから 日々の出会いが始まります。
お金も物もお客様も、何もなかった20数年前の銀座店を開いたあの頃を思い出します。
街ゆく人が小さな店に入って下さる喜び。
その時かけた 今も同じの言葉を。
「盆栽はご存知ですか? 盆栽はお好きですか?」そこから始まるのです。


8日から開催される「国風盆栽展」 
私達エスキューブも 例年通り 上野グリーンクラブで併催される『立春盆栽大市』に、会場二階に最大ブースを設けます。
あと数日の今、飾る盆栽達の最後の仕上げ準備に追われています。
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今年は コロナウィルスの関係で、購買欲の強い中国愛好家の来日が、昨年比で10~20%にとどまると予想されます。
各同業者も“どんな動向になるものか?”と、成り行きに不安を隠せませんが、私は ある意味で この状態を良しと捉えての機会と思っています。
恥ずかしながら、日本盆栽業界は 昨今 中国人の盆栽買付の動向に振り回されているように見えます。勿論 商売ですから 誰を相手としても頑張ることは良いのですが、「中国人はどうなのかな」
・・この言葉をオークションでも普段でも何処でも聞きます。
“ 私達はブローカーなのか?盆栽業として園を預かるプロなのか?” 日本の大切な愛好家の方々を蔑ろにしている感が 私にはずっとあります。
愛好家と語り合い、共に盆栽に対して向上する姿、修行時代から それこそが盆栽園を営む者の在り方と思って来ました。
今回の国風展売店は、色んな意味で、私達プロに 「自分達はお客様とどの様にあるべきか?」を 改めて振り返るものになってほしいと願っています。
勿論 国を問わず 海外各国の方々が、日本の盆栽の素晴らしさを楽しみにいらして下さることは大歓迎です。
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プロよ! ブローカーならず!盆栽園の主人たれ!


水石協会の名誉会長として、また 日本水石名品展の会場として、私達 拙い水石協会の後盾となって下さる明治神宮。
今年はこの社が鎮座されて100年の年となります。
奇しくも今年は水石協会が誕生して満60年、名品展も第60回の記念展となります。

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白黒の写真は、この明治神宮が造られる時の地鎮祭の写真です。
100年前、ここは点在する松原があった土地だったのです。
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100年祭を奉祝して、水石協会は、6月に神宮の社の中「正参道」に118mの舞台を造り、約100点の名盆栽を奉納陳列をさせて頂きます。
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盆栽をご神域に仮設の舞台を作っての展覧は、神宮創建以来初めての事、私達も身の緊まる想いです。
先日、新年の参賀が一段落された神宮文化部の皆さんへ協会としてのご挨拶に伺い、盆栽奉納展示をする正参道大鳥居を仰いで来ました。
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ここは100年前、全国からの有志達による「献木」で生まれた“人と自然が創り上げた杜”。
まさに盆栽に対しての人の心と同じものが宿した聖地なのです。
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小林理事長と二人三脚でやって来た水石協会も、8年目。
明治の杜に見守られて、頑張ってみます。
勿論、愛好家のご出品、専業者の皆さんのご協力があればこそです。どうかみんなで見守って下さい!


京都の「慶雲庵」一般財団法人「京都国際文化振興財団」の収蔵庫から先週お預かりしてきた名器を鈴木伸二氏に預けて、
以前より財団が所蔵していた宰相吉田茂が愛した盆栽・ヒマラヤ杉を、国風展に特別出品する為の 鉢合わせの植え替えが行われました!
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京都に盆栽美術館を概観する予定の財団、その準備室長として 将来の館長となる鈴木伸二さんと、二人三脚の日々。
国風展には 財団として この盆栽と岸信介元首相旧蔵の菊花石「菊衣」が出品されます。
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盆栽は 鉢映りで こんなにも品格が出るものかと、あらためて鉢との取り合わせの大切さを実感しました!

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