雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴49年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

【待ち遠しい秋の気配“  大徳寺庭園❗️】


例年以上に30度を超える残暑が続く毎日💦


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その中でも芳春院盆栽庭園は、少しずつ展示の内容と飾りが、秋色になっていきます。

色付きには程遠い今、まずは床の間や室内飾りに、掛け物や水石を使って、

少しだけでも、近づく秋を感じてもらおうと、設えました。


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庭園内「通玄庵」には、五葉松の文人樹。

江戸期名筆、長澤蘆雪の「雲月図」。

幽玄な静けさに、瀬田川虎石のくず屋石。


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展示場は故高木礼二翁遺愛の五葉松。


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山野草飾りは珍しいサワヒヨドリ、去年から名前が分からなかった山草でしたが、

我が芳春院常駐番のナベさんの朋友が、天才的な山草博士!

写真を送ると一発で種名を教えてくれました❗️

まさに令和の牧野富太郎‼️

今年は十五夜も九月の末、秋の気配もその分遅いようです💦


羽生雨竹亭を開いて間もなく、地域の盆栽愛好家の方々と楽しい交流が出来ればと開いた「盆栽教室」も、いつの間にか15年を過ぎました!
盆栽教室と言うと、初級・中級、カリキュラム💦実費教材など、事業的にやっているように感じるでしょうが、ここはそうではありません。
““自由““  がすべての基本です❗️

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自分で持っている盆栽の“ここからの作り方?ここからの仕上げ方?“を、楽しく相談しながら、
またそれを一緒に参加している教室の仲間“生徒“達で、共有しながら経験を重ねる!と言う姿です。

近隣で趣味を楽しまれていた方々、この中から、自分の樹が「国風盆栽展」と言う夢の舞台に届いたものも、5点になりました❗️

“盆栽博士ちゃん“で、マスコミでも有名になった、清水ちえりさん(当時は小学生でしたが、今では早稲田大学附属の高校生!)も、現在も教室の生徒さんです❗️
私は、盆栽教室で“物を売る“という事に重きを置いていません。
この雨竹亭を“我が家“の手入れ小屋、“相談に乗ってくれる仲間がいる家“として、アットホームな雰囲気で居てくれれば充分なのです。
業のして盆栽園を営む中、こうして少しでも盆栽趣味の皆さんの役にたつ事を出来ればと願っての事です。

普段は忙しくて、中々参加出来ません💦 
雨竹亭の培養責任者である、“生え抜き“!物静かな角田君(今では常務職!)が、
月2回、コツコツと生徒さん達と積み上げて来た教室です。

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宣伝をするわけでもなく、開催している日曜日に偶然羽生にいらしたご夫婦など、
まずは“お試し“で参加して、自分の生活環境に合えば、通ってみる。
月2回ですが、特に時間の縛りもありません。

私が教室に参加する際に伝える事はひとつだけです。
「自分の樹をどうしたいかも大切ですが、こんなに沢山の盆栽がある羽生、訪れた時は、せめて園内を一周して、様々な盆栽達の顔を見て下さい。それがとても勉強になります」
趣味の皆さんは、それぞれの人生をしっかり歩まれて、盆栽を趣味とされる、立派な方々。
私達も、この“生徒さん“と言う人生の先輩方から沢山の事をいつの間にか教わっているように思います。
月2回、月謝5,000円、ぜひ皆さんも気軽に覗いてみてくださいね‼️

雨竹亭盆栽教室についてはこちら


9月の声を聞いても、収まらぬ暑さ! 
名匠木村正彦先生の庭の名樹達も、先生の愛情深い日々の管理で、記録的と言われた今夏を乗り切りました。

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8月に若干体調を崩された先生、83歳となる中、相変わらず弟子の方々と新作の創作盆栽の制作に余念のない毎日ですが、
戦前のお生まれ、我慢強いのは、私達戦後生まれの比ではありません。
泣き言を言わない先生だけに、周りに居る私達が、出来るだけのサポートをして、いつまでもお元気で盆栽と共に過ごして頂きたいものです。

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利き腕に激痛が走り、急に物も握れない事がこの夏にあったなど、過ぎてから笑い話のように私達に仰います。
“老成“される中だからこそ見える本当の盆栽の姿。ここからの木村正彦先生の姿をずっと見守り続けたいと思います。
人として、盆栽家として、届かぬ師として。



【変貌する赤松大懸崖の改作!】


YouTubeで公開している私共の『WABI CHANNEL』も、木村正彦先生、小林國雄先生などのご協力を得ながら、順調に毎週の新動画の発表をしています。

多くの盆栽のYouTubeチャンネルがありますが、WABI CHANNELは、雨竹亭らしい視点の動画を心がけています。


今回、羽生から15分の所で盆栽園を開き、一昨年には「日本盆栽作風展」で、内閣総理大臣賞を受賞した、

森山義彦さんに協力頂き、赤松大懸崖の改作に挑んで頂きました。


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木村一門の若き名匠として、温厚で物静かな職人肌の森山さん。

赤松の見所を捉えると、僅か5間で仕上げてしまいました❗️


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さすがの技術力!と洞察眼!

改作の様子は、編集作業(字幕を入れて、英訳を入れて💦10月初旬には公開となります。

神の手を受け継ぐ中のひとり、是非動画もご覧下さい‼️


WABI CHANNELはこちら

(YouTubeに飛びます)


【“一照千隅“  伝教大師・最澄の心を水石に込めて】

以前KBS京都の長寿番組「比叡の光」に大徳寺芳春院盆栽庭園で取材を受けた縁で、
天台宗大本山「比叡山延暦寺」の教務主事、清原徹雄師を訪ねて、琵琶湖畔、大津市坂本町にある、延暦寺“里坊“の本坊「滋賀院」に伺いました。

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里坊とは、本来山内(比叡山の上)で生涯を過ごす天台僧侶達が、高齢となり、座主の許可を得て、山麓の街に下りて暮らす為の、塔頭のようなもの。
現在でも50以上の里坊が、山麓や琵琶湖畔に点在しています。
この里坊の“本山“としての役目を担うのが、この滋賀院です。

1615年、“黒衣の宰相“と謳われた、天台僧“天海”が、
後陽成天皇より京都法勝寺の建物を下賜されて、1655年、後水尾天皇によって名を賜った寺院です。

大徳寺でお会いした時から、物静かで柔和な、それでいて身を律した立ち居振舞いに、厳しい修行をされた方のみが漂わせる“静かな力強い気品“を感じる方でした。
テレビ収録でお別れする際、“必ず叡山にお伺いします“と約束し、今回あるものをお届けする為に、ご都合を頂きました。

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瀬田川石、石肌の片隅にまるで蝋燭が灯るような紋様が浮かび出た石。
天台宗の開祖、伝教大師(最澄)が唱えた有名な言葉・“一隅を照らす“  これは世界遺産となった、
延暦寺の根本中堂に千年の時を過ぎてなお守り伝えられる灯火、“不滅の法灯“と繋がります。
(浄土宗・法然)(浄土真宗・親鸞)(臨済宗・栄西)(曹洞宗・道元)(日蓮宗・日蓮)他、
日本の仏教を創られた多くの僧侶が、修行の時を過ごした延暦寺。

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清原徹雄師は、快く受け取って下さいました。
この石はこれから数百年、比叡の山懐に静かに蔵されます。
いつの日か、水石文化に興味のある人物が、この“仏教の母山“にある、この石を観た時、
また新たな歴史が始まってくれる事を微かに願って、尊い聖地を後にしました。

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