雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴44年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”


【銘酒『久保田』の蔵元屋敷・有形保存建築での展示!】

水石協会の理事として、日頃から交流深い中川幹男さんのご案内で、昨年に続いて新潟 長岡に赴きました。
昭和初期の素晴らしい邸宅建築の中での展覧、慌しい毎日から離れて 座敷陳列の空気に触れると、何故かホッとします。
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中央での水石展などでお会いする愛好家の方々もいらっしゃって、
地方の水石展という感覚を超えて、秀石・秀席・名品道具 を拝見する機会となりました。
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羽生でも 雨竹亭の片隅に 小さな和風の“掘っ立て小屋”を建てて、
お客様達と 座敷の中ならではの “しつらえの楽しさ”を 伝えたいと前々から願っているのですが、
予算を貯めると 何故か欲しい盆栽や水石にそのお金が流れていってしまって?
反省・反省!

【9月例会 3,044万円!】

月例のプロオークションとして関東最大級の小社「天地会」の月例会が、秋空の下 開催されました。
今回は 海外よりの買付業者は無く、久しぶりに “日本人単独オークション”となりました。
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国風展出品樹をはじめ、数多くの盆栽・樹鉢・卓 などが 出品され、総出来高3044万となり、
最高額は 鈴木伸二さんが落札された 真柏古樹の250万でした。
中国勢の参加のない中、国内同朋のみの中で、よく出来たなあ!と思います。
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流通の要と言えるプロオークションですが、買いたいもの・買えないもの・様々な思いの中、
一喜一憂の刻は、プロとして全神経を使います。
盆栽界のリーディングオークションハウスとして126回目の例会、
これからも、精選良品を求めて頑張りたいと思います。
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千葉県匝瑳市マルキョウ盆栽が主催する交換会が10日現地で開催されました。
海外からの参加者も含めて毎月盛大に開かれ、小社の「天地会」、
群馬県の「6日会」と共に、民間三大交換会と言われています。
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会主の江波戸さんは、気風の良さは天下一品の方!
娘婿の光一さんの共種園さんと共に、エスキューブの事業の良き理解者でもあります。
市場流通は、時として盆栽の人気種の相場が変動して 安いなあと思う時、
中々買えない時 など様々ですが、ここマルキョウは現地の愛好家も参加される為、
“こんな樹があったんだ?”と 感心するものがあります。
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海外の購買力が強く、徐々に市場の優良な盆栽が減少する中、
愛好家の皆さんの為にも 私達専業者は頑張らないといけません。



11月23日より開催される「第38回日本盆栽大観展」に、エスキューブ は18メートルに及ぶ大ブースを設けます。
この中で 木村正彦先生の作品を特別展示する為に、私の依頼に応えてくださって、現在 大型創作盆栽の制作が開始されました。
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今春 先生と旅をした 中国『黄山』の原風景をイメージしての 過去最大級の石付き作品を展示する予定です。
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今回 その制作打合せをさせて頂いた時、原石の加工・切り出し・そしてその石にどの様に盆栽が植栽されるのか、
生理学的にも健康な培養を考えた、先生独自の各所における驚きの隠された技術を知り、
"他で見る類似作品との大きな違い"に感銘を受けました。
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現在は素材である石と真柏各樹の下準備の段階ですが、10月初旬にはいよいよ制作になります。
近代盆栽』が、この制作過程を全面取材され、大観展終了後の直近の1月号(12月1日発売)に、その全容が公開されます。
10日26日から大宮盆栽美術館で開催される『木村正彦の世界』にもこの作品は展示されます。
作家とプロデュース役・この盆栽界には今まで存在しなかった形を名匠と挑戦出来ることに、期待と責任を感じています。
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この制作の助手として、先生の下で修行中の海外からの2人
(アンドレイ・ロシア22歳、アレッサンドロ・イタリア20歳)にも、記憶に残る刻になってくれる事を願っています。

【 『雲糸の松』】

先日上野グリーンクラブで開催された 日本水石協会主催のオークションに、心の奥に刻まれた五葉松が出品されました。
誰にも気付かれないように、せり台に登場した時「思いのある樹!」と声を上げて落札しました。
11年前、自分の不徳で もう立ち直ることも叶わない事業の失敗をして、命すら失う事も当然となった時、
馬鹿な私をまるで泥水の中からその手ですくい上げて下さった方の旧蔵樹。
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40年程前、その方が国風盆栽展に出品されたもので、18年前にも一度縁あって手元にあった樹です。
今でこそ、こうして多くの盆栽水石を愛する方々のお陰で 僅かでも斯界の役に立つよう日々を過ごしていますが、
あの頃を思えば、生涯 この世界の為に滅私奉公をし続ける事しか 私の一生は無いと思う記憶です。
こうして、3度目の縁で 羽生の庭に帰ってきたこの樹に『雲糸の松』と言う銘を付けました。
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芥川龍之介の短編に「蜘蛛の糸」という物語があります。
生きている時 ありとあらゆる悪行の限りを尽くしたカンダタという男が、地獄で無限の苦しみにもがいている時、
天からこれを見ていた仏様が、カンダタが命ある時一度だけ、道端の蜘蛛を踏まずに避けた事を思い出しました。
仏様は天から細い糸を地獄に降ろし、カンダタはそれにしがみついて地獄から抜けられる時、
下の方からこの糸に多くの地獄の亡者達が「俺たちも揚げてくれ!」と 細い糸が切れる程にぶら下がってきました。
「やめろ!これは俺のものだ!」と、カンダタが叫んだ時、仏様の糸はふつっと切れて、
カンダタは元の地獄の中に落ちていきました。
私をあの時 慈悲の心で導いて下さった方、その方へのあの時の想いをいつまでも忘れぬように、
この五葉松に『雲糸の松』と名付けたのです。
いつまでも羽生の庭で私の生き方を見守って頂き、私はこの樹を守り抜いていきたいと思います。

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