雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴49年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

【古都名刹の“夏空“❗️ガンバレ!40度の中の盆栽達!】


鬱陶しい梅雨がまるで嘘のように、抜けるような青空と白い雲。
 五山送り火“のふもと、京都北区に位置する大徳寺にも、暑い夏が訪れました。
山々に囲まれた千年の都、内陸性の盆地として、夏暑く、冬寒く、は承知の上での始めての夏ですが、
実際この季節になると、埼玉県羽生市の私の庭と変わらない暑さにビックリします。


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先日の梅雨の合間に庭園ならではの、“陽よけ帽子“を設営した事が、ホントに良かったと思います。


朝8時に盆栽と杉苔に水をあげて、ひと通りの掃除と飾り付けをして開園となる10時の開門。
手入れ室の日陰にかけた気温計を見れば、まだ10時なのに、既に36度!

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午後には40度を示す日がほぼ毎日!
日中の盆栽の鉢中の“蒸れ“を考えて、夕方4時頃までは、追い水を控えて、
“さあ、シャワーだよ“と言うばかりに、樹々に水遣り。
ここから1ヶ月、こんな猛暑の中になるでしょう。
人間も熱中症に気をつける日々ですが、盆栽達も、必死に耐えてくれています。


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旧盆、8月の中旬を過ぎれば、暑さの中にも、朝夕に何処か“秋風“を感じる季節が来てくれます。
人も盆栽も、暑さに負けないで、頑張りましょう❗️


大宮盆栽美術館で開催した『山水涼景・水石の世界』は、
私が事務局長を務める一般社団法人・日本水石協会との協同主催による企画でした。
東京オリンピックも佳境を迎える中、水石協会長である、島村宜伸先生と小林國雄理事長と、同館に伺いました。

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※記念写真撮影時のみマスクを外して撮影しております※

平成天皇陛下(現・上皇陛下)のご学友でもあった島村先生は、農林水産大臣、文部大臣を歴任された日本に尽くされた方。
87歳になる今もご健勝の日々、初めて訪れた盆栽美術館での水石展を観覧され、
庭内の吉田茂元首相、岸信介元首相、の盆栽達をご覧になって楽しまれました。
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先生の出品された水石の席、今回の展示を任された身として、喜んで頂いた事にホッとしました。

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五輪の花咲く菊花石、昇る日輪の掛軸、左に仏教の三重塔、右に神道雅楽の蘭陵王。
山水景情や侘び寂びに代表される水石飾りですが、“ハレ“と言う舞台としての飾りが、盆栽と同じく水石にも顕される事を伝える席にしました。


大宮から45分、お忙しい先生に初めて羽生雨竹亭へご案内しました。


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日頃より親しくさせて頂いている、河田晃明・羽生市長も共に出迎えて下さり、短くも思い出深い時を過ごしました。
羽生のスタッフ達にもひとりずつ丁寧に笑顔の挨拶をしてくださる島村先生。
昼食も、僅かに残されたものを、箸を使って丁寧にひと隅に寄せて箸を置かれる見事さ。
人の上に立つ方のあるべき姿を学んだように思います。


藤沢市辻堂 湘南海岸から内陸に数分の地。
椎野宝樹園での6年に及ぶ修行を終えて、ご祖父より受け継いだ盆栽園を、新たに新装された高橋桂さん。
四十年前、二十代前半の私は、若き頃の大恩人、秋本廣一翁に導かれて訪れて以来の訪問でした。


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元々の盆栽園はそのままに、小径向かい側に造られた園。
漆喰の白壁が映えるまさに“湘南の盆栽園“と呼ぶに相応しい美しさです!

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江戸期より続く名家、土地の素封家として、地域の信頼厚い高橋家。
次の当主として、ご祖父が築いた名園の後継者として、
一般の盆栽園とは異なる重責を胸に抱きながらも、“王道の古典盆栽“の良さを深く理解される桂さん。


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私が昔伺った時は、まだ生まれていなかったとのこと!
海外への販売が主流の中央盆栽界。
その中でも、是非揺らぐことなく、日本の愛好家、神奈川県の次世代愛好家と共に歩んでくれる事を願っています。

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それにしてもセンスいいですね!
勿論、穏やかで品格ある人柄も!
鎌倉・茅ヶ崎・湘南へ出向かれた時は、是非盆栽と高橋さんに会いに行って下さい!



7月16日~8月11日、私達〈一般社団法人・日本水石協会〉が、毎年協力している『山水涼景~水石の世界』が、大宮盆栽美術館で開催されています。


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この内、後期展(7月30日~8月11日)の展示内容を預かり、例年のように“ギャラリートーク“つまり、展示内容の解説を行いました。
但し、今回はコロナ感染予防の為に、観覧の方々を前にした解説ではなく、
私のような年代には難しくて分からないのですが、ズームと言う、皆さんのお顔が見えないパソコンの前での解説となりました。

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少しでも水石の美と深さを伝えられればと思い、一般の方でもわかりやすい解説に努めました。
小さな石に求める日本の自然の景色、禅僧や茶人が求めた沈潜した観照の美、そんなものを上手く伝えられたか?
まだまだ未熟内省身を恥じています。

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美術館のYouTubeで、その時の内容が見られるようです。
是非皆さんもご覧になって下さい。





芳春院盆栽庭園の、名木の代表格のひとつ、故岩崎大蔵先生の遺愛樹(現・慶雲庵所蔵)。
岩石性黒松の筆頭として盆栽界に知られる樹、朝の水遣りをしている時、ふと、樹から何かがこちらを見ている感じがしたので、よく見ると❗️
鳩が樹の枝元の方にジッといて、微動だにしないでいるではありませんか❗️

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私も半世紀近くこの仕事をしていて、野鳩が盆栽に巣作りをしている光景は初めてでした。
“参った“もし卵を抱えていたら、無造作に巣を払う事も出来なくなる、
そう思いながら、鳩が私を気にして飛んだ時、寺内のモミジの小枝を集めた“未完成“の巣を覗くと、まだ何もありませんでした。
“良かった!“ 鳩には申し訳ないけど、天下の名木が鳥の羽ばたきや、爪などで小枝や古色ある幹肌をやられたら大変です。
そっと小枝を取り払い、思案の末に、縫糸を日差しよけの柱掛けにランダムに回して、鳥が内側に入れないようにしました。

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広い大徳寺の中、鬱蒼とする樹々多く、なぜ、盆栽の中に作ろうとしたのか?
芳春院の和尚様は、
「大樹だと、烏達に卵を狙われる。盆栽のしかも葉が硬く針金のように触ると痛い黒松なら、烏も中へ入れないからだね」と。

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名樹「大王」に巣を作って卵を孵そうとした鳩のカップル。
もしかしたら、生まれてくる鳩は、大王の子、鳩の王子様だったかも(笑)

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