雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴49年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”


朝夕の冷え込みで、雨竹亭の盆栽達も少しずつ紅葉の色を増してきました。
応接展示室に、“黄葉“のイワシデを飾って、“秋“を室内に運んでみました。

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京都盆栽園老舗、大溝さんが作られた寄せ株立ちの古盆です。
葉性の良いイワシデを若木の頃に選んで作られたのでしょう。
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枝々の細やかな仕上がりも、自然に出来てゆく性です。

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取合わせの掛軸は、塩川文嶺の「散り紅葉」 時雨に打たれて散りゆく紅葉の葉が、過ぎゆく秋の風情をよく表しています。
脇には、峻厳な岳景を見せる揖斐川龍眼石。
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もうそこには季節を感じるものはなく、荒涼とした厳しい景色が現出されています。

里山の雑木林の黄葉、遠く仰ぐ山々には、吹き荒ぶ風、刻々と変化してゆく日本の四季、
誰もが唸る程の盆栽ではなくても、季節を楽しむことは出来ます。
私がいつもひとつだけ大切にしているのは、鉢の中での培養の古いもの、“持込み“と言われる古感です。
樹は年輪を重ねたものは、じっと見ていると、自然界の風雨に長い間晒されてこそ現れる“貌“を見せてくれます。
室内にこんな景色の表現を、出来れば月に2回はしてみたいものです。


“大型五葉松の山採り逸材が、熊本にある“との情報で、数年ぶりに九州の地に赴きました。
世界大会でその存在が明かされた“幻の五葉松“・『祖母五葉松』の作者、
(正確には江戸期より代々受け継がれた樹達を守り伝えた一族の現ご当主)田中古老の庭園に久しぶりに訪れました。


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祖母五葉松を拝見に伺ったあの頃も、世俗から離れた孤高の雰囲気を感じていましたが、今回お会いした時は、まさに“仙人“!
それでも、田中本家に残してある祖母五葉松群は、相変わらず見事な翠を湛えていました。

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“守り続ける“と言う年月を、人生そのものを捧げて費やした古老。
人も樹も、“生きる“という事を教えてくれるものだなあ“とあらためて教えてもらう時間になりました。


澄んだ空の下、羽生雨竹亭の盆栽庭園も、徐々に彩りを増しています。

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コロナ禍で、お客様に“遊びにいらして下さい!“と、お声をかける事も憚るような日常が続いてきましたが、
感染される方々が減少して、世の中も“外へ出かけて気分を晴らしたい!“と願う人達でいっぱいのようです。

私達盆栽業も、こんな時少しでも自然や広々とした庭園で、
のんびり盆栽の四季の移ろいを楽しんで頂くことが、皆さんに出来る事と、
スタッフで庭園や樹々・水石達を飾ってみました。


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一年半、今までにない刻をすべての人達が過ごしてきた中で、あらためて盆栽達をゆっくり観て頂ける機会にして頂ければと、願っています。

「観照会」の字に、“観賞会の間違い?“と言われますが、
観賞は長め愛でること、観照は目の前にある樹や石と自分で対峙して、心の内側にある景色を照らして楽しむこと、
その願いを込めています。

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葺き替えの済んだ展示場と応接室、壁の仕上げも開園以来の改修をしての開催です。
盆栽や水石達に、是非会いに来て下さい。
11月1日~7日9時~16時


羽生本店雨竹亭ホームページ
【羽生本店雨竹亭 観照会のお知らせ】

羽生本店雨竹亭
アクセスはこちらから


【久々の1億円超え❗️約1000点の落札‼️】

雨竹亭も加入している、日本の盆栽界の中心的流通市場・盆栽協同組合“水曜会“の秋季大会が、
上野グリーン倶楽部で14日開催されました!
前日の搬入は全国から出品される盆栽で、倶楽部が埋め尽くされる有り様!

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朝8時からのセリ人の掛け声で始まったオークションは、目利きセリ人達の、一瞬の品定めで、発句が行われて、
同じ値が3度掛けられると落札されると言う、一般の愛好家では、着いていけない様相。


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慣れている私達は自分がこれと思うものがセリ台に載ると、合い声をかけて落札できるか?
荷主・セリ人・との丁々発止が行われます。
誰もが欲しいものは似ていますが、私を含めて“強者“と呼ばれる上位20者が、秀品の多くを落札します。
暗くなるまでかかった大会、総出来高、1億円の大台に乗ったのは久しぶりです。
それでも、“どうしても欲しい“と思う程の名品は僅か。
またそれらは大手が競い合う状態がいつもです(笑)
雨竹亭の落札は550万ほど。
ウェブサイトでの商品、銀座店に飾りやすいものなど、市場で手に入れる物には限りがあります。

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全国に散らばる仲間が集う場、老も若きも同業者同士、各地の様子を語り合ったり、
コロナが少しずつ収束する中での、盆栽展などの話が尽きません。
いよいよ、秋本番!盆栽の本格的シーズンが始まります!


【王者の真柏!大改作の末!師匠木村正彦先生も絶賛‼️】

2年の雌伏の時を経て、長く雨竹亭の非公開培養場で生育されてきた真柏大樹が、
日頃エスキューブの手入れの協力をしてくれる森山義彦君の手によって、今年の日本盆栽作風展審査会で、映えある大賞を受章しました。


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32歳と言う最年少での大賞、九州の地から、名匠木村先生の下で修行の日々を送り、
二代目と言う身でありながら、中央で己の技を極めたいと、私の所のそばに盆栽園を構えた彼。
技術者として真摯に盆栽と取り組む彼には、木村正彦先生の真の弟子として、技術者の道を歩んでほしいと、今回の改作の橋渡し役を務めました。




長く未公開名樹と噂されてきたこの真柏。
私の大旦那さんである舩山先生に、“若者の未来をご一緒に作ってほしい“と懇願し、
大金をはたいて、ご自分の名では数年は展示もできない事を理解して頂き、森山君の夢が叶ったのです。

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若き盆栽家が、誰もが夢に描く“作風展の内閣“。
立ちはだかる“大金がかかる素材の探索と入手“、作者だけでは叶わない事が殆どです。
“森前さんは、自分が20年も手がけた樹が、表裏逆転の末、自分でない者が脚光を浴びるのは良いのか?“
と、私を気遣ってくれる仲間もいました。

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60を超えている私。
願うことは、その盆栽が私が手掛けるよりも更に価値ある姿に導ける者に託す事、
そして、未来のある若者の背中を押す事になれる事、誰よりも森山君の大賞受章を喜んでいるのは私なのです。
勿論、私の言葉を信じて、夢の改作を見守って下さった舩山会長の懐の深さには感謝に堪えません。
いずれ、『近代盆栽』に改作の経緯が発表されます。
是非、皆さんも木村先生の愛弟子、森山君の晴姿を名樹と共にご覧になって下さい。

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