雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴45年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”



完成を間近にした、大徳寺内の盆栽庭園。


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細かな所を色々と想うと、庭園を預かる者として、頭が痛くなる思いです。

門入口脇の桜川砂を敷いた所に予定している、枯山水の石組の仮置きをしました。
尊敬する蔓青園加藤三郎先生の遺愛品である、揖斐川の龍眼石と伊予石。


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5代目園主、崇寿氏より割愛を頂き、本来は来年の3月の開園前に正式に設ようと思っていましたが、
28日からの「京都国際文化振興財団・慶雲庵」の、同所で行う財団展に際して、
入口を砂敷だけでお迎えするより、惜しまず披露しようと思いました。

大徳寺の中には、多くの名勝名園があり、禅林としての枯山水庭園は、日本を代表する歴史深いものが各所にあります。
その中で、私のような盆栽水石以外何の能も無い者が、ここに枯山水などと言えるものを設るなど、おこがましい限りです。

揖斐川の龍眼石は、盆栽界で石付に用いる石、三郎先生は創作的景色を大切にした作品を多く遺されましたが、
平石やこの龍眼石を使っての盆栽への造詣において、他の手本を示されました。
その先達の遺愛品を使ってこの庭園に“盆栽を付けない石で景色を表現してみたい”と言うのが、この枯山水なのです。


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取り敢えず、仮組をして、最終的には、秋吉ご住職のご指示を頂いて固めたいと思っています。
私が出来るのは、三郎先生達が築かれた盆栽界への想いをこの日本を代表する名刹が開く盆栽庭園に遺すこと、それだけです。
もう少しで、全体が仕上がります。
還暦を過ぎて、日々勉強の毎日です!



来春2月の国風盆栽展、1月初旬には審査申込み締切、下旬には選考審査。
ここから本格的な樹の準備に入ります。

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エスキューブは、通年木村正彦先生と共同で進めていますが、申込み予定の樹は、11月中にハウスに取り込んで、手入れや状態の万全に努めます。
先日も先生の所に伺って、今年の進行の打合せ をしました。
真柏・黒松・五葉松・その他、多種多様な盆栽がこれから先生のアトリエハウスに集まります。


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多い時は50点を超える最上級の盆栽達が、所狭しとハウス内に置かれます。
既に先行して搬入してあるもの、これからお客様の所からお預かりしてくるもの、
審査での評価が楽勝のもの、手入れを入念にして、1点でも審査点を上げたいもの、
鉢映りを直さないといけないもの、一人ひとりのお客様の気持ちになって、考えなければならず、思案に苦労します。


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それでも、国内最高の展覧にご自身の盆栽が飾られた時の、愛好家の方々の嬉しそうなお顔を思えば、
精一杯のお手伝いに努めないとと、気を引き締めての準備が始まります。





暦の上では、もう立冬。
暮らしのまわりにも“過ぎゆく秋”が感じられます。
夏の終わり頃に手に入れた柿の盆栽が、ようやく飾れる時になりました。

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スタッフ達は、“間もなく実も終わりますが“、とずっと言っていましたが、
私は柿の盆栽に求めるのは、たわわの実なりが過ぎて、僅かに残った葉の実の風情こそが、柿に描きたい世界だと思っています。

飾る当日、残された葉の半分を取る、この時、“自然に落ちてゆく葉姿“を心に浮かべて、
人間がいかにも“わざとらしく少なくした“感じが出ないように心がけました。

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鉢も今まで白い丸鉢に入っていたものを、“侘びた風情“が一層となるように、丹波焼の古鉢に、根を痛めないようにそっと植え替えました。

取り合わせた掛物は、田中訥言の「時雨の散り紅葉」。

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霜月の山風に葉を散らしてゆくもみじ。淡彩で描かれているので、柿の実の色を殺さず、溶けあってくれました。

添えには、木彫の茅屋。


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山里の晩秋の景色が、席中に表現出来たかなと思います。

この柿の見頃は、僅かに5~7日程です。
でも、季節の移ろいとは、そんな具合が丁度良いです。
その1週間の為に、1年の培養を続ける。
こんな贅沢こそが、盆栽趣味の醍醐味だと思っています。
さり気無い柿の盆栽。
国風展などに出品される老名樹とは違いますが、心に沁みる点では、些かも負けていません。
そこに込められたそれまでの時間、想い、
盆栽飾りは、これでいいと言うものがなく、奥が深く、私もまだまだ樹に教えてもらう事ばかりです。


大徳寺での「慶雲庵特別展」の準備の為、しばらく業界のオークションに出席出来ないスケジュールとなる為、
久しぶりに千葉匝瑳市の「マルキョウ交換会」に参加しました。
手頃な1~5万程の盆栽から、100~200万の将来の国風展へ向かう樹まで1000点を超える出品!


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特に感じたのが、ビットを入れると必ず対抗ビットが入るのが、海外からのオーダーに応える代行業者と声。
会全体の約半数が海を渡る事になりました。
特にサツキの動向が最近目立って注目を浴びています。
海外への検疫等の関係で、“運び易く管理が容易“と言うことが人気に火がついたと思われます。


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それでも全体に言えるのは、10~20年作り上げた樹が、手間賃も出ない額で落札されること。
お客様に供給する立場からはありがたいものですが、今まで作り手が育ててくれたからこうして市場に出てきますが、
海外に輸出された分はもう日本には戻りません。
次の時代、日本の盆栽素材の枯渇は目に見えています。

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人件費の高騰で、日本での苗木からの作出者が激減する中、私達プロは、次代の業界の在り方を根本から考えなくてはいけない岐路に来ているようです。

先達が人生と生活のすべてを費やして残してくれた盆栽達。
もう一度あの若き修行時代に日々苗木の八房五葉松の接木をした頃を思い出し、ここから何をしなければいけないか?
振り返る日になりました。



新宿都庁前、副都心のシンボル京王プラザホテルのロビー階に、
『日本の伝統文化・癒しの盆栽展』が、企画協力NHK文化センター・展示協力日本宝樹会で開催され、参観して来ました。


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普段より業界で共に活動する蔓青園、加藤崇寿さんが案内してくれました。
国風賞受賞の名樹など、都心の現代空間の中に、“古典でありながらモダンな美”として、象徴的に展示されていた事が嬉しかったです。

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これだけの名品でも、コロナ禍の中けして多くの方々が観てくれる訳でもない、
それでも盆栽の素晴らしさの中に“人の心を癒してくれる“事を見事に伝えてくれています。

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私も含めて、少しでも盆栽の素晴らしさを伝えたいとする活動は、それぞれの姿は違っても、
この展覧のように「傍観者」ではなく「実践者」として苦労をされても頑張る方々に敬意とエールを送りたいです。

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