雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴44年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

【歴史を感じる盆栽に感動!】

中国江蘇省への盆栽視察の帰路、初めて上海植物園に行きました。
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10年の訪中、何十回も上海に立ち寄りましたが、盆栽・盆器・の交流が忙しくて、
中々この歴史ある有名な場所へ来ることが出来ませんでした。
50年ほど前、恩師須藤雨伯が訪中した際、「とても大きな庭木のような盆栽がたくさんあった」
と言う言葉だけが記憶の中にあり、
“どうせ 公共体が陳列してある盆栽の名前だけの下らないものだろう”と先入観が、私の中にあり、今まで訪れる機会を作らなかったのが真実です。 
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しかし、今回 この目で見て、その場所に立って、そこにある半世紀をゆうに超える鉢中で培養された盆栽達の姿を見ることで、
私の考えは 実に愚かで身勝手なものかを知り、己に恥じるばかりでした。
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行き届いた管理・ひとつひとつの樹が その「個性」を尊重されて その樹だけが醸し出す「姿」を見事に表現していました。
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中国の盆栽界と交流する前、“盆栽は圧倒的に我が国日本が優れている”と自負していた自分が、
広大な大陸に育まれた盆栽文化を 西は西安・貴州・北は北京・煙台・南は武漢・重慶と旅を広げることで、
私が15歳より学んできた盆栽は、その深さと歴史の長さ・そして歴史の大河のような広がりという点で、中国に学ぶものが大きい事を知りました。
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その見聞の時を経た中で、この上海植物園を訪れたことが何よりも良かったと思います。
盆栽という私にとって人生哲学を教えてくれる道は、
日本も中国も包み込む自然が人と寄り添って創りあげた“東洋の大いなる文化”なのだとこの上海植物園が教えてくれました。

【埋れていた古木の植替え!】

昨年の暮れ、九州の山里に数十年の歳月、誰に見られるわけでもなく、古老の手により守られて生き続けた五葉松群が羽生に来ました。
懸命に培養をされていたのでしょうが、盆栽の専門的技術を持った人たちの手を入れるわけでもなく、
荒れた状態での入手だったので、今年の春も芽伸び・つまり根がしっかりと水を上げ始まるのを待って、大掛かりな植替えに挑みました。
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左右180㎝!高さ120㎝という巨大な松は、1t近い重さの石をくり抜いた“鉢”に入った状態で、
根を抜くだけでも人力では難しく、フォークリフト爪を使っての吊り上げ植込みでした。
山砂で植えられていたこの樹は、それでも100年を越す樹齢、鉢合わせをして見付角度を定めて、雨竹亭の庭に運んで見ました。
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昨日まで、第3培養場の"邪魔物''扱いされていた樹が、まるで鳳凰が羽を広げて羽搏く姿となり、前庭の主のような存在感をしめすようになっていました。
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盆栽は、完成した名木だけではなく、このように名も知れぬ地方愛好家の庭の片隅に 静かに生き続けたものから誕生します!
気合いを入れて、十数本 続けざまに植替えをしましたが、やっぱり大きいものばかりでした。
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それでも、無名の老樹を 問いかけるように荒仕事をしている時は、楽しいものです!


「春の観賞会」に合わせて、亭内の盆栽以外の部分も 飾り直しをしてみました。
我ながら“よくもこんなにあるものだ”と、“買い物好き”の自分を笑ってしまいます。
収蔵庫の名鉢・水石・水盤・卓。
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水石専用の展示室。
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中国広東・宜興・で誂えた鉢類。
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手頃なものから名品まで、千点以上の品々。
最近も 国風賞を受賞された古老愛好家のご親族より、蔵品の一括買取を依頼され、盆栽百点弱、盆器 約200点を引き受けました。
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まとめ買いは、もとより嫌いではありませんが、1年も経つと いつのまにかなくなっているものです。
それだけ業者の方々や愛好家の皆さんに御贔屓頂いている証ですね!
それでも盆栽も水石も鉢も、すべての面で 良品の入手が難しくなってきています。
日本の盆栽水石界が、残してきた遺産を 大切に伝え残したいものです!

【至高の水石飾り!】

玄虹会長老の根岸庄一郎先生の邸宅に同好の「玄虹会」有志メンバーが集いました。
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今春より 体調を崩した根岸先生を見舞い励ます同朋の集いは、
根岸先生の渾身の座敷飾りを満喫させて頂く機会ともなりました。
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玄関脇には、端午の節句を間近にした木彫の鐘馗像・寄付き床は 宇田荻邨の筆による扇面の「さくらんぼ」 
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広間床の間は、間調子絶妙のポンピラ石の遠山型を名器 植松陶翠の水盤に合わせ。
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掛物は 児玉希望の「若鮎」大脇床は木彫の「杭に翡翠」。
季節を捉え、主たる水石を映えさせる道具立て。
名手と謳われた根岸先生の面目躍如と言える見事な設えでした。
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近年は、盆栽も水石も単体としてのコレクションは、名品を蒐集される方も多くいますが、
それを使い切って、総合的に設えて飾り込む・・と言う 日本文化を凝縮した盆栽水石趣味へと昇華できる方が少なくなりました。
これは 私達 プロと言われる者共の研鑽の不甲斐なさによるところが大きく、将来を憂う部分があります。
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貧者の一灯かもしれませんが、私も先師片山一雨先生・恩師 須藤雨伯 より薫陶を受けた
「正統の盆栽水石飾り」の中に息づいた文化そのものを、僅かでも伝えて行きたいと思います。
・・・飾りの中に、席主の人格が響くような・・・切なる願いです!

【花・木立・風雪・・自然の美!】

春の観賞会にあわせて、雨竹亭の床の間に 季節の飾りをしてみました!
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五月雨の様に降りさがる藤の花。
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この季節は花物盆栽の王者です。
愛らしい溜まり石を配して 空に囀る雲雀の姿。
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「揚雲雀」という歌枕にもなる言葉が、画中に表現されているこの掛軸は、大家 小泉 薫先生の旧蔵品。
脇床には ヤマコウバシの寄せ植え。
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作風展にも出品されたこの種の代表樹です。
庭先の藤の花、水景色が身近になる中、空に鳴く雲雀。
里山の林は淡い萌黄色の新緑の爽やかさ。
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遠くに仰ぐ山々の頂には、季節を超えて生き抜く 真柏の厳なる姿。
ひとつの部屋に その時の季節と大自然を表現することは、楽しいものです!

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