雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴49年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

【木村正彦先生指導のもと、蔓青園・森前・椎野宝樹園 実演!】

日本盆栽協会 福田理事長・木村正彦先生 を筆頭に、
中国江蘇省で開催された「日中盆栽家文化交流会」に招待され、式典と実技講演をしました。
石付真柏の制作でしたが、
何とか木村先生に合格点を頂く出来映えとなってホッとしました。
蔓青園加藤さん・宝樹園椎野さん・アシスタントとして木村先生の修行を終えて間もなく
羽生の隣の加須市にアトリエを構える九州出身の森山君を加えた"連合チームジャパン"で挑みました!

郵送で先着させておいた揖斐川石が割れてしまっていたので、
現地協会の張主席の石を使わせて頂きました。
材料の真柏は昨年私共の西安楊凌に運んでおいたものを1200キロかけて現地に運んだものですが、
石をお借りした関係で西安に持ち帰るわけもいかず、総勢9名が宿泊・食事・送迎の接待を頂いたので、
結局贈呈することになってしまいました。
文化の友好は出費がかさむものですね~(泣笑)


【古希を過ぎても衰えぬ"作り手としての情熱と感性"を尊敬!】

日本を代表する盆栽作家 木村正彦先生との長年の夢だった中国盆栽旅行に出かけました。

今もお忙しく活動される先生の僅かな刻を頂いて、
私がこの6~7年の間に見た"今の中国盆栽界"のほんの一部だけでもお見せしたいと半年前からお願いした旅を叶いました。
十代で小僧に入った頃からお付き合いを頂いた木村先生ですが、
こうして日本の現場を離れてのご一緒する機会は初めてでした。
旅の合間に先生が見せた"盆栽作家の真の心"は私に多くのことを再認識させてくれました。
特に上海から西に1200キロ以上内陸に位置する陝西省西安に広がる「西安唐苑」が現在所蔵し、
未来の大型真柏名樹への作出を手掛けている一群は、木村正彦先生をしてもその圧倒的な存在感に驚嘆されていました。

「来て良かったよ」この言葉を頂いた時は、長旅の中でも私に気遣いさせまいと気丈に振舞われる先生が、
今でも創作の意欲と飽くなき探究心に溢れていることを教えて頂きました。
「日本の若いプロの人達も"まだ見ぬ見知らぬ世界"を肌で感じる為に、みんなで見に来られるといいね」
と世界の盆栽界の真の胎動を体現されていました。

始皇帝墓に近い秘匿の山々に1000年の時を超えて眠り続けた"神宿る"程の古樹達。
山から降ろされて5年、ここから更に3~5年の後には真柏と言う盆栽樹種の概念すら変えてしまう程の存在。
日本の盆栽界が今後どの方向へ向かえば良いのかを教えてくれている様な気がしました。


【盆栽の本道を伝えるお手伝いを】

夏の頃より企画相談を受けていたNHK「美の壺」での盆栽特集が収録の段階に入りました。
私共の雨竹亭庭園での撮影が行われ、久しぶりに観音堂にも盆栽飾りをしました。

応接床の間も日輪の掛物を配した五葉松の設え、
季節を超えた"日本"の象徴として収録してもらいました。

12月2日(金)NHKBSプレミアム で放映予定です。
ぜひ、盆栽を愛好される皆さんもご覧下さい。
(床の間の五葉松は、収録許可を頂いた 京都国際文化振興財団 の所蔵樹です) 

 
【"見えぬ月を席中に描き出す" 】

樹齢100年を超える黒松の老木を手に入れました。 
文人盆栽はその基準が難しく、"細く下枝のないひょろひょろとした木"
が文人樹だと勘違いされる方や、プロですら解釈が出来ずにいる面々もあり、
「究極の盆栽」と評した古人の想いがわかります。 
この樹は、荒ぶれた幹肌、捻る様な立ち上がりの腰部分、
捻転する幹に見える枝が落ちた跡のサバ姿、
そして樹冠と僅かな"落ち枝"で構成された空間ある樹相。
これ以上"引き算"のしようがない身形、まさに文人盆栽の真骨頂だと思います。 
文人盆栽は飄逸とした姿の裏側に、厳しく果てし無く永く生き抜いた足跡が感じられるもので、
決して昨日針金技で創出出来るものではありません。 

今回この樹を使って「掛け軸を使わない席飾り」をしてみました。 

老い立つ如き老松、その樹下に佇み松を仰ぐ古老。
禅の問答や古詩に登場する景趣を樹と木彫のみで表現してみました。 
一枚板の地板に双方を載せて飾ってみましたが、僅かな"間"がきつくダメでした。 

詩情を湛える飾りは数センチの"間"や高さが、
そこにある「心地良い緊張感」的な空間を創り上げます。
「空間有美」とはよく言ったものですね。 


【老境の中に描く 季節の楽しみ】

40年のお付合いを頂く愛好家、小林二三幸様より季節の盆栽便りが届きましたので、
ご本人の了解を頂き、お紹介させて頂きます。
写真の日本建築の座敷は、小林様が大手企業の重役を退いて
「晴耕雨読 盆栽三昧」の日々を過ごす為に、10年前より旧家を改築して作り上げたものです。

今回はまさに "秋"! 
山蔦の老木が濃淡の深紅の彩りを見せる最高のタイミングです。

「月に落雁」の掛け軸は、"遠見の景色"で席の季節と広がりを扶けています。

脇床の鋳胴の人物像は「養老」。
今回は養老に固執せず、蒔や柴を取りに来た杣人が、山中で憩うひとときの情景を物語っています。
主木を引き立て、季節の興趣を喚起させ、ものの想いを深める・・
当たり前のように設えるこの席に、小林様の熟練の"見せぬ技"が潜んでいます。
脱帽・脱帽

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