雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴44年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

【 盆栽業界屈指のオークション】

半世紀の歴史を持つ、日本盆栽協同組合主催の 定例オークション「水曜会」は、
毎月組合員登録を持つ盆栽業者のみが参加できる 名門オークション。
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年2回(3月・10月)の大会は、私も参加して 全国から集められた秀作盆栽を買い付けています。
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今回は約1000点の出品!
お陰様で私もトラック1台分の買付で、取引高1位となりました。
但し、今回の様子を見ていても多少の不安が残ります。
出品作品のレベルが徐々に下がっているように感じられます。
市場に流通する盆栽そのものの数と内容が減少しているのです。
対中国関連の勢いは相変わらずのものがありますが、国内全体の市況はけして上向いているようではありません。
拙い私が言えることではありませんが、業者全体が、
“明日売れるものばかりに傾注して抱えて作る”
と言う盆栽業本来の姿を何処かにおき忘れているように思います。
新たな愛好家の方々への積極的なアプローチや、盆栽展などでどの様なプレゼンが必要なのか?
真剣に考える刻が待った無しで近づいていると思います。
買い付けた盆栽も、少しでも手直ししてより良いものにしてからお客様にご紹介する、
そんな当たり前のことをコツコツと続けたいと思います。


【胸を打たれるひたむきな研修生達】

12月に開催される盆栽作家の登竜門「日本盆栽作風展」は、
近年 次代の作家達のための
〈新鋭作家部門〉が設けられました。
今年も私の所で研修に励む若き盆栽家達が、拙い経験の中でも、必死に己の“今”を見つめて この展覧に挑みます。
特に今年は 私の中国展開を支えてくれる西安の提携会社「楊凌雨竹亭園芸公司」で
2年の就業を経て、
法務局の手続きによって出向社員として羽生本店で日々盆栽の手入れ管理に努める中国の若者二人が挑戦します!
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郝君(右:ハオ・23歳)と 趙(左:ツァオ・24歳)です。
中原と言われた唐の時代の首都 長安は蔵法師が天竺から仏教の経典を持ち帰った 古都。
彼等は「日本で盆栽の手入れや管理を覚えて必ず故郷で盆栽家として頑張る」という自分達の強い決意を胸に来日しました。
日本語も殆ど分からず、特別ビザの関係で、1年は肉親が死んでも帰ったら来られなくなる、
と言う様々な問題も、自分達で両親を説得して来日しました。
日常の彼等は 私から見れば、現代の日本の若者も見習ってほしい程の 勤勉さです。
月々の給料も 決して裕福とは言えない両親に少しでも送ってあげたいと、
“日本の野菜は高すぎ”と言って、培養場の隅で 自分達で菜園を作って食べています。
言葉が少ししか分からなくても、私の言うことを一言一句聞き漏らすまいと、
必死に動き、今では 私が考えている事も、殆ど先に理解しているようです。
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先日、最後の鉢合わせを指導しました。
自分の手で 仕上げた樹が、自分の名前で 展覧会に飾られる。
彼等に私の出来るすべてを3年間に注ぎたいと思います。
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【伝承の為 羽生に到着!】

昨年 世界盆栽大会で、その存在が公開された 絶滅したとされていた
九州八女地方の「祖母五葉松」伝承者である田中家はもとより、
現地では「矮鶏五葉松」で親しまれていたものです。
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昨春の訪問で この伝承種と田中家とのご縁を頂いた私ですが、
夏の終わりに 久しぶりに当地に訪れ、ご当主と歓談のひとときを得ました。
「苦しい戦後、先代達の想いを守る事だけを考えて、人が馬鹿にしようとも守ってきた事で、森前さんと出会えた。
私も歳をとって樹達の管理も大変になってきた。
世の中に矮鶏五葉松の大切さを伝えてくれた森前さんに、残されたものを託したい」
こんなお話から 羽生に去年の兄弟達が到着しました。
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“受け継ぐ心に応えたい” 早速 痛んだ枝を処理して、鉢が割れているものを仮植えして、
さあ、ここからこの山里に眠り続けた老樹達を、檜舞台に登らせる準備に入ります!
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10日5日~8日まで、栃木県宇都宮市 県文化センターで、県内外の名品を集めた「逸品盆栽展」が開催されました!

北関東盆栽組合理事長に我が兄弟子が就任し、依頼もあり雨竹亭を含めて私どものお得意様の名木三点も展示させて頂きました。
初めて訪れる会場でしたが、とても立派な展示室で、

広い空気感の中にまるで美術彫刻を飾るように樹形も様々な樹種豊富な盆栽が飾られていました。

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岩崎太蔵先生が旧蔵されていた五葉松、木村正彦先生に展示前の修正施術をお願いして飾られた玄虹会の寺内先生。

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小泉薫先生旧蔵の名木、赤松文人「観月」を同じく玄虹会 本出先生。

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そして正面を彩ったのは、松柏名樹の大家 舩山会長が珍しく花梨の叢立ちの大樹。

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舩山会長・寺内先生 と共にゆっくりと展覧を観賞しました。
会場に立つと、樹々のそれぞれの「声」が 聞こえて来るような、とても嬉しい気持ちになりました。

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台風ばかりで 棚の盆栽を守るのに、スタッフ達が不眠の日が多い今年。
その合間に訪れる“秋の澄んだ気”は、ホントに良いものですね。
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海外に出かけてこの国に帰った時、日本の自然の素晴らしさが空を見て・星を見て・盆栽達がいる庭を見て・つくづく感じます。
雑木盆栽での(モミジやススキ・実成りもの)秋景色の飾りは、
季節を映して嬉しいものですが、
松柏盆栽を使っても「掛け軸」や「脇飾り」の水石などで、季節の風情は醸し出せるものです。

帰国して数日、久しぶりに床の間飾りをしてみました。
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丁度 昨日 木村正彦先生の所から、お願いしていた五葉松の流れのある樹が 手入れを終えて帰ってきたので、
同じく目をつむって(笑)京都の美術商から“ボッタクられ”ているのを覚悟で手に入れた「雲月図」と共に 飾ってみました。
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豊穣の秋・生気に満ちた葉色の五葉松。
雲間に澄み切った煌く光を放つ名月。
松の盆栽で遠くには既に紅葉の奥山を表す赤玉石。
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名筆ならではの秋の空気まで感じられる画中、松の緑と鮮やかな赤玉石の色彩の対比。
こんな「当たり前だけど、スキッとした飾り」が私は好きです。
日々の正業に追われるこの身ですが、盆栽に生きる者として、
日本の素晴らしい季節に感謝しながら “生命の移ろい”を、五感で受け止めて参りたいものです。

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