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盆栽歴44年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”


【圧巻の幻の真柏原木群との対面】

中国江蘇省と山東省の境、新沂(しんい)という地域は、黒松の原産地であり、
山東省からの樹齢1000年を超える巨大真柏群の集産地です。
以前より中国で時折拝見する信じられない程の巨大な真柏、いつかその原木が集まる地に行きたいと思っていました。
そんな時、日頃からお世話になっている江蘇省盆栽界の張主席より
「木村先生・森前君で、新沂で開催される中日盆栽文化交流会に来てもらえないか?」
との連絡を頂き、かの巨大真柏群を視察できるなら木村先生も行きたいとなったので、
合計5日間の行程で森山義彦氏・浅子隆敏氏を伴って、中国へ赴きました!
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講演は 私の3時間の講義・木村 森山 浅子 三氏による黒松実演改作 を1日行いました。
後、2日間を各所真柏と現地の「油松」と呼ばれる黒松類の原木を拝見に出かけました!
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“どのようにしてこんな巨大な真柏(正確には側柏という名前)が自生しているのだろう?”と目を疑う程の存在感!
木村先生如く
「森前君の能力で、何とかこれを日本に運べないか?これが来れば私は、登龍の舞 を超える作品を作りたい!」
の弁。
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真柏も黒松も、日本では既に枯渇して素材の入手が不可能なものばかり!
植物検疫・通関・根洗い・様々な問題がありますが、実現できるか?挑戦してみようと思います!
・・次の時代の日本盆栽界の為に!

【須坂市 井浦家!】

20年来の朋友、須坂市の井浦勝樹園に玄虹会の皆さんと訪れました。
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ご先代より守り継がれている名樹『風神・雷神』 久々の対面でしたが、やっぱり圧巻の貫禄! 
『風神』は 日本の現代真柏盆栽を木村正彦先生の『登龍の舞』と共に代表する樹。
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もうひとつの『雷神』は、現在更なる樹格向上の為に、敢えて徒長させて次なる整姿を待っている段階でした。
現在の園主 井浦貴史氏は、生一本で 裏表の無い男から見る「男前」!
ご一緒した 福島の大家・舩山会長曰く「あれはスッキリしていて良い男だね」
地方で頑張っている友人を こんな見方をしてもらえると、何とも嬉しいものです!
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夥しい未完の真柏群!
先代より続く 真柏の素材からの枝接ぎ・吹き上げによる施術と培養は、彼にもしっかり受け継がれていました。
“こんな時じゃないと 頼めないな”と、思い切って10年以上前から気になっていた大型真柏の
大器の逸材を相談しました。
しばらく考えて「森前さんならいいですよ」と、即答!
この スパッとした性格が大好きです!
別に数点の手頃な盆栽を分けてもらって失礼しましたが、とても心地よいひと時でした。
※音声が流れます。音量にご注意ください。

【廣瀬邸 見学会】

私が取りまとめ役を務める「玄虹会」の秋季研修旅行。
大中国盆栽旅行を数年続けた中、今年は久し振りに国内盆栽研修としました!
1日目は現在の日本愛好家を代表するおひとり、廣瀬幸夫先生の大邸宅へ訪問しました。
大徳寺での『玄虹会展』などにも参観に来てくださり、昨年は大観展の際、
会員との会食を木村正彦先生達とも過ごされた廣瀬先生。
以前よりの“一度 噂に聞く大邸宅と名木群を拝見させて下さい”と言う、私の懇願に快く迎えて下さいました。
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10年の時をかけて造られたご自宅は、日本建築の粋を現代に残す名建築!
選び抜かれた木材と匠の技。
これだけの個人邸宅を平成の作品として見るのは、他には無いと思いました。
広々とした庭園、その一角に設けられた盆栽棚。
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所蔵される五葉松を中心とする古樹達は、第一級の名樹ばかり!
この中には国風賞を受賞したものだけでも6点と聞いてびっくり!

邸内に招かれてその造り・所蔵される名石・道具にため息ばかり!
これでも最近の蒐集品を蔵に入れる暇が無いものだけ!との事!
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玄虹会の会員の皆さんもあまりにも圧倒的なスケールと幅広い眼福高い収蔵品に、言葉を失う程でした。
盆栽から水石へ、歓談の時は 美術品そして蒔絵芸術・刀剣へと、そのどの分野においても、国内トップレベルの内容!
今でも盆栽界にこれ程の見識と実蔵をされる方がいらっしゃる事に、感嘆と敬意を持つばかりでした。
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“本物に魅入られると、くだらないものは要らない!その方が無駄も授業料も安くすむんだよ”
と、お若い頃よりの蒐集趣味を語られていました。

今回の慰安を兼ねた研修旅行の第一歩で、会員の皆さんにも ある意味の満足をして頂けたと有難く思って、
「名品の坩堝」と言える 邸宅から、妙義山を眺めて退出しました。


日本水石協会の年2回の大オークションも、業界の恒例のイベントになりました。
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8月25日上野グリーンクラブでの開催は、愛好家・プロ・含めて大勢の参加を頂き、
現況の市場では最高額と言える1億1千万円の出来高を得ることが出来ました。
木村正彦先生をはじめ、日本盆栽作家の皆様、王永康先生達 中国盆栽家連、まさに国際的なイベントでした。
出品数も千点を優に超える名品達。
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古渡烏泥「集成倣古」は、日本対中国の競り合い!
最終的には、京都の盆栽美術館構想中の財団法人が落札!(拍手!)
他にも 水盤名品が450万・210万・180万・伝承水石類では380万の菊花石を筆頭に、
150万前後の名石が多数、盆栽は国風展出品作品などが、350万・280万・等々。
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盆栽の方は、日本盆栽協同組合の競り人の方々の協力を頂けましたが、
水石・盆器・水盤・卓・などは、殆ど私ひとりが中心の競りなので、8時スタート・19時終了で、喉はかすれ、身体はクタクタになりました!
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でも、最近は業界のオークション全体が “品薄” と言われる中、多くの皆さんのご協力で、よくこれだけ集まったと思いました。
本当に感謝です。
このオークションの収益金は、すべて日本水石協会の文化催事等の費用の一部に活用されます。
私達役員は、ボランティアですが、こうして集められた資金で、協会の行事を運営できるのですから、ありがたいと思っています。
次は、来年の1月です。
どなたでも参加できるイベントですので、皆さん是非ご覧になってみて下さい。
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【百日紅】
先日 40年来のお付き合いをさせて頂く 古老盆栽愛好家のお宅にお邪魔しました。
20代の銀座三越の盆栽店を任されていた頃に出会い、相手様も当時40代になったばかり。
盆栽水石の商売はもとより、様々なお客様と出会って、
いろんな事を吸収したり、学んだりしたあの若かりし頃を良く知る数少ない方です。
お勤めを引かれる頃は、大企業の重役になられていましたが、趣味の世界、
そんな日本を背負う程の仕事の大役を担う方など、私にはおくびも見せずに、一愛好家として接して下さいました。
一線を引かれて、神奈川県の里山のような鄙びた農屋を買い取り、盆栽三昧の日々を過ごされる為に、修復をされ、
失われつつある日本の盆栽飾りの文化を中心に、哲学的な晴耕雨読の毎日を過ごされていらっしゃいます。
本来、奥様と老成の終の棲家とされたのですが、漸くその地に移る頃、奥様が病魔で他界。
免許証も持たない古老が、どうやってひとりで暮らされるのだろう?と、お預かりしていた盆栽の移動も当時は、ためらった程です。
“なに、ひとりでやれるようにやるよ”と、達観された言葉を頂くのみの古老。
あれから10余年、晩夏の暑気残る川沿いの小高い邸で、古老は穏やかなお顔で、私を迎えて下さいました。
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玄関には涼をとる溜まり石、名器 古渡青磁の水盤を、さりげなく使われ、三輪晁勢の「翡翠」の掛物。
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添えには 古老ご友人が作られ贈られた白鷺草。 
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けして “ひけらかす”わけでもなく、当たり前の飾りの中に、茶の湯ににも似た「客をもてなす」心遣いがにじみ出ていて、
相変わらずの「飾りの名手」だなあと、設えに頭を下げました。
ひとしきりの世間話の後、“森前君が来るので、懐かしい樹を気張らずに設えてみたよ”。
客間(本座敷)に入ると、細身の紅色の百日紅が 楚々と花を咲かせていました。
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取り合わせの掛物は、林 文塘 の筆による「驟雨に蝉」
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名残の夏を静かにそして健気に生き、
命の謳歌をその花に託す百日紅、俄かの雨にひと夏の命の蝉が飛びゆく様。
脇床には 安倍川のくず屋石。
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“見えぬ人影、過ぎゆく季節、万象の中で繰り返される命”。
“この樹を覚えているかい?”古老の呼びかけに、“そうか!あの時の樹”と思いました。
最近は 社員に普段の出入りを半分任せている方。
銀座の店を苦労の末開店した時、まずはと思い、お世話させて頂いた百日紅でした。
“あの頃が懐かしいね”・・・この言葉の中に込められている古老の様々な想い、
私はどれだけのことができたのだろう、と有難くも不甲斐なさも感じる時でした。
人も時も止まりません。
60の年に京都大徳寺という場に盆栽庭園を挑む私。
ここからなにが私にできるものか?私自身もわかりません。
それでも古老が仰るように、“その日その日を懸命に生きることだよ。”
この言葉をそのまま自分の今におこうと思うひと時でした。
老成にはひとそれぞれの姿があると思います。盆栽も一本ずつ違います。
私も私らしい「明日」を生きようと思います。

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