雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴49年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”


盆栽水石の研鑽の愛好家団体「玄虹会」回を重ねて16回目の展覧は、
舞台を京都大徳寺芳春院から
東京「春花園盆栽美術館」へ替えての展覧となりました。
当初、会員からは、“大徳寺から春花園か“と、格式という面で落胆の雰囲気すらありましたが、
蓋を開けてみれば、盆栽水石を飾る為に造られた本格数寄屋建築の同美術館の「啓雅亭」の見事な構えと、
11席に及ぶ床間造りに、感嘆の声すら上がりました。

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現在、「景道三世家元」を襲名されている春花園小林國雄親方。
つまり景道の本部教場でもあるここで、玄虹会の飾り上手の面々によって繰り広げられた“三昧世界“は、さすがのひと言でした。

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五葉松に名筆橋本関雪の旭日、脇に翁の像。
まさに“ハレ“の一席。

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季節を謳う枝垂れ桜、掛物は“描き表具による“雪月花“  心に染みる情感豊かな席。

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そして大座敷中央には、ハレも季節も超越した、蓬莱山を想わせる八瀬の石。
名筆村上華岳画伯の名品「観世音菩薩像」、脇床には真葛香山の香炉の格調。
仏性観を心底に込めた、飾りの奥義を観たように思う一席でした。

その他、茶室に設えた台座石と水盤石の水石飾り、大観の名画と真柏の大床飾り。

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盆栽展で見る盆栽とはひと味もふた味も違う世界観。 

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“趣意を練る“そしてその心に合わせた主飾りと各種道具、この趣味の高みを目指す方々の心意気が満ち溢れる会となりました❗️
この玄虹会展の中身は数回に分けてご報告します。
併せて、私がナビゲーターを務めるYouTubeチャンネル「WABI CHANNEL」では、その全貌をお紹介しますので、是非チャンネル登録をしてお楽しみ下さい‼️


25歳の時から40年のお付き合いのある愛好家の所へ伺いました。
同じ65歳!
定年して盆栽三昧の日々を送られる手入れ好きの穏やかな方。

北関東の寒気を避ける為、納屋を冬室代わりにして、雑木類を保護されていました。

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もみじ・花梨・楓・椿・・花物がお好きな方。
苗木のような樹から刻を惜しまず40年❗️
いつの間にか、丹精が形になり、美しい樹相を見せるまでになりました。
“太くなくても、展示会向きでなくても、自分の好きな盆栽を!“と言い続けて来た方。

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五葉松・赤松の文人形もお好きで、“ウチの樹達は、風がすり抜けていくよ(笑)“と
いつも変わらぬ方です。
実用で集めた、山秋や鴻陽、そして秀峰、数えれば500点‼️

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あれを入れよう!これに合えば!としているうちに、集まっちゃった‼️と笑顔。
趣味家と言うもの、誰かに評価してもらおうとか、高く売れるようにとか、そんな事全く無い盆栽人生。
羨ましくもあり、見習うべきところもあり、の1日でした。

【“春近し“  大徳寺盆栽庭園・植替え前の手入れ❗️】

“寒の戻り“を思わせるような寒さの京都。

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大徳寺芳春院盆栽庭園も、まもなく始まる“植替え“を前に、雑木盆栽や花物盆栽の細々とした手入れをしています。
“芽留め“と言われる徒長枝の切込み、河津桜や寒桜の野放図になりがちな枝々の角度や流れなどの微調整。

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少しずつの手入れですが、これを年々怠らずにしている事で、いつの間にか、盆栽達はその姿の美しさを増してゆきます。

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“これを植え替えなきゃ“  “あれの鉢をどのように替えようか“  そんな事を考えながら、
少し寒い風の中、盆栽達に向き合っている時間は、意外に楽しいものです。

今日も海外の方の多いこと❗️
工事準備の進む庭園奥のシートの中、盆栽庭園は現在の2倍の広さになります❗️

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新たに始まる庭園の第二期工事!
ここからまた新しい舞台の幕開けが始まります‼️

それにしても、樹々を一本ずつ眺めれば眺めるほど、やるべき“仕事“は果てどもありません💦 
“樹守り“として頑張ります💪


盆栽作家森山義彦さんと台湾の愛好家の所へ手入れや植替えに伺った時、

長年の交流ある台北市の「景峰園」に伺いました!


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毎年、日本から盆栽を買い付けて、正規検疫の為、すべての土を取る大変な作業💦

それでも経験深い初代は、今年の輸送分を到着後すでに植替えを済ませてありました❗️

“これが今年根の土を全部外した樹?“とビックリするほどの健常さ❗️

初代である詹維常さんは、二十代前半には単身日本に来て、苦難の末に台湾への輸送を成功させた功労者。

67歳になる中、息子さんの詹登傑さんに盆栽園2代目として業を譲り、今は自分の好きな盆栽の作出に努められているとのこと❗️

羨ましいですね‼️


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小品盆栽に対する登傑さんの丁寧な仕事ぶり、初代维常さんの圧倒的な台湾真柏の素材からの作出。

“盆栽家はこうありたい“と言う姿がここにはありました。

いずれ日本は素材の“枯渇“が課題になるでしょう。

こうして海の向こうの盆栽家達が、苦労して日本の盆栽の素晴らしさを母国で広めたように、

私達も、日本の次の時代の盆栽家の為に、新たな素材を海外から諸問題を克服して我が国に届ける仕事が大切になってきます。


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山採りの形もまだ無い素材が、5~10年で、展覧会に飾れる樹となる。

これ程に胸躍ることはありません。

日々の糧に駆け回る日本の盆栽業、少し考えるべき事を、海の向こうに行くと感じます。


コロナ禍を経て、久しぶりに台湾の愛好家の方の所へ、日本から渡った盆栽達の手入れに、
私と盆栽作家・森山義彦さん、そして初めての“海外デビュー“の羽生スタッフ近藤君と訪れました。

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親しい台湾の盆栽園の方に日頃の手入れをお願いしていましたが、人手不足で、回り切れない💦 
というSOSを受けて、各樹の内容に合わせた手入れ(剪定・針金掛け・幹洗い・硫黄合剤塗布・針金ほどき・植替え)等々、
3日半の行程で、
夜8時くらいまで頑張ってみました。

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こうして海を渡った盆栽達。
おそらくこの10年で、全国では2~3万本に及ぶのではないかと推定されます。
気候や管理の違う国へ行った樹達、どの国へ行こうと、そこで樹を愛して大切にしてくれる人、
私達プロは、彼の地に行った樹達が、健やかに生きていくことを手入れという面でサポートに努める事が、責務だと思っています。

高い旅費や手間賃を払って頂いて、手入れの済んだ樹をご覧になって、心から喜んでくださるお客様。
勿論、手入れでお伺いしている間は、こちらからの要望で朝から夜暗くなるまで、
盆栽棚から離れず、昼も秘書の方にお弁当を現場に運んで頂いての作業。

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“また来るからね“ と心の中で盆栽達に伝えて帰国の途に着きます!

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