雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴47年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”


九州から東北を縦断した14号台風。
各地に被害をもたらし、苦難された方々に心からお見舞い申し上げます。
私達、盆栽業は台風が近づけば、すべての予定を壊してでも、“盆栽を守る“事に尽くします。

IMG_2391
羽生雨竹亭は、庭内外、2000点の盆栽!
盆栽にとって一番怖い風害から守る為に、気象予報を見ながら、小屋に取り込むもの、棚から下ろすもの、鉢を縛り込むもの、樹に合わせて全員で行います。

IMG_2392
IMG_2393
大した事なければ、こんなに手間かけなくても💦と思う作業💧
それでも、甘く見ていた時に、大切な樹が被害を受けた苦い思い出。
スタッフもキツイ作業を頑張ってくれます。
台風一過、無事に過ぎれば、さあ💦戻し込み!これがキツイです。
“樹を守る“この思いで一気に頑張れるけど、何もなかったあとの作業は、クタクタになります。

IMG_2394
各地のお客様のことも気になりながらも、伺って縛り込みをお手伝いできる所は限られています。
“大丈夫だったですか“こんな連絡しか出来ない時は、申し訳なく歯痒くなります。
“野分“と呼ばれる台風が幾度か過ぎれば、すっかり景色と空気は秋色になります。

守った樹達が、美しい葉色と姿で、訪れる方々を楽しませてくれる事を願って、戻し込み💦に頑張ります。


昨年の春、3年間の日本での修行を終えて、故郷中国へ戻った、ハオ君とツァオ君。

IMG_2266
私と一緒に日本での技術習得を見守って下さった、名人・木村正彦先生も
“稀に見る二人。出来ればもう一度来日してあと数年学べば、紛れもなく、唯一の私の弟子として認められる“
とまで言わしめた逸材達。
故郷のご両親、ビザなどの関係で帰国しましたが、“ここからの更なる向上が大切“と思って、
私が公私共に盆栽家として人として信頼する、中国常州の王永康先生の所に預けて、“生活費は私が出します。
王先生には住居と食事をお願いします“とお願いして、一年半が経ちました。

雨竹亭の10倍はある王先生の「随園」二人はここで日々、数え切れないほどの盆栽の手入れに従事しています。

IMG_2268
一年中、盆栽の手入れが出来る環境。
盆栽家を志す者なら、理想の日々と言える毎日を、彼らは怠る事なく過ごしています。

週に一度ほど、“会長、見て下さい“ と、仕事をする前の樹と針金施術をした後の姿を数多く送ってくれます。
70代の老翁・王先生は、何も言わずに、我が子のように彼らの仕事ぶりと技術の向上を見定めながら、扱う樹の内容と作家としての技術を授けてくれています。
日本の木村先生・中国の王先生。
交流のある二人は、本人達が言うようにまさに“義兄弟“のような盆栽を愛する老翁達です。

私には若き中国の盆栽家友人として大倉という所に孫程輝さんがいます。
商売ばかりが目立つ中国盆栽界(日本も似ていますが・笑)で、“この人は本当の盆栽業を作れる人“と思った人物です。
例えれば、ある日、私と久しぶりに彼の所で会う機会がありました。
当日、彼から連絡があり、
“森前、申し訳ないが、日程を明日にしてくれないか。実は昨日、悪天候で私の大切なお客様の盆栽が、強風で棚から落ちて鉢が割れてしまった。急ぎ弟子達と向かっているので“ と。

盆栽家は、愛好家あってのもの。
この姿勢こそが何よりも大切なのを私達も修行時代に身に付けました。

この孫さんの所に数年前から黒松の名樹を預けています。
培養から芽切りなど、“友人だから気にしないで“と、料金も取らずに守ってくれています。

ここへ先日、ハオ君とツァオ君を王さんの許可をもらって、手入れに派遣しました。
日本で習得した技術。
帰国して王先生の所で磨いた技。

私が思っていた通りの仕事を彼らはしてくれました。

IMG_2267
“商売を考えるな、ひたすら盆栽と向き合え、そうすれば自然に人は集まってくるから“
そう教えて日々応援しています。
コロナなんて、早く消えて、昔のように海を渡って当たり前のように往来したいです。
盆栽を愛する仲間に、国も国境もありません。
若い二人と、もっと“次なる幕開け“を語りたいです。


【見捨てない命と象形(かたち)の継承】


羽生雨竹亭には、第一・第二・第三・各培養場を合わせると、数千本の盆栽があります。

お客様よりお預かりしているもの、美しく明日にでも飾れる手入れを施してあるもの、

まだまだ未完で数年をかけて作り上げてゆくもの、そして様々な原因で本来の姿を失って、

傷み枝枯れしたり衰弱によって樹勢の衰えが見られるもの。

そのすべてがここにあります。


先日、雨竹亭がこの地に根をおろして間もない頃からご縁を頂く愛好家夫人より森前さんの声が聞きたいとの連絡を頂きました。

懐かしい方、ご家族でこの庭でひとときを過ごされる様子が蘇ります。

久方の夫人よりの電話の内容を聞いて、申し訳なく恥じ入る想いでした。


愛蔵して日々楽しまれている真柏の古木。


IMG_2223


私のお誘いで、日本盆栽大観展に出品された樹です。

この連絡の少し前に、京都から羽生に戻ると、この真柏が庭にありました。


IMG_2220


枝枯れをして、針金が食い込み、樹の劣化がハッキリと見られました。


IMG_2221


お客様が痛めてしまったのだろう、時間をかけて作り直さないとと、

銀座や羽生でよくある樹の回復管理、と言う認識でした。


夫人の電話は以下の通りでした。

“ 森前さんとはホントにご無沙汰しています。頂いた真柏は、我が家の大切な樹として素人なりにも日々管理に努めて、楽しんでいました。

しかし、この数年、少しずつ状態があまり良くなく、羽生に連絡して相談していました。

そんな中、私が大病を患い、主人にも面倒をかけながら、樹を見守ってきました。

それでも中々、大観展に飾った頃の素晴らしい姿に戻ることはなく、

このままでは樹の為にもいけないと、幾度か羽生に連絡して預かってほしいと連絡しました。

出来れば森前さんに直接お願いと相談をしたかったのですが、担当の方との連絡で、今に至りました。

主人と相談して、これでは盆栽の為にも、趣味で楽しむべきもので、

心を痛めたり、苦労をしたり、盆栽を処分してもらって、この趣味をやめようか、と思っています


エスキューブ・雨竹亭は、全国の愛好家の方々に盆栽とサービスを提供する会社。

夫人のお話を途中でごめんなさいと言いたいのをこらえて、聴いていました。

“○○さん、お詫びの言葉もありませんが、せめて一年、この樹の為にも、私に時間を下さい。

一年後、大切になされた樹をご覧いただいてから、方針を決めて下さい

これが私がお答え出来る精一杯でした。

元々、良識深い人柄のご夫妻、私の言葉を受け取って下さり、ここから一年の時を、

この樹が、愛好家が、受けてきた刻を想いながら、樹勢の回復、樹相の改作に努めたいと思います。


担当者に非のすべてがあるとは思いません。

愛好家の方々、担当者の日々のあるべき姿、

そのすべてに心くばりが至らなかった、私の責任です。


若い頃、お客様に誘われて、ヘリコプターで、東京の夜の空を眺めた時、

なんて綺麗!まるで宝石が散りばめられているようだと思った時、操縦桿を握るお客様から

「森ちゃん、この綺麗な光ひとつひとつに、多くの人達のその人にしかないドラマと苦労があるんだよ。

綺麗な見方だけではなく、その中にある真実を感じることが大切だよ」

と教わりました。

IMG_2222



この真柏も、百年以上の刻を深い山岳の中で必死に息抜き、人の目に留まり、自然界から盆栽への道を数十年前に歩み始めたものでしょう。

多くの盆栽家、愛好家の慈愛を受けて、盆栽としての姿を展覧会に勇姿を見せるまでになったのです。

今、この樹は、人為と言う恥ずかしい災害で、苦難の刻を迎えています。

人が与えてしまった災害ならば、人の手によって、回復させてみる!

羽生の庭にある数えきれない樹達。

日本盆栽界を代表する名樹達から、ささやかな名も無き、見捨てられがちな草木まで、それらはすべて「命」なのです。

忘れてはいけない盆栽人としての大切な心を、夫人が問いかけて下さった気がします。

人生、失敗だらけの私、この真柏は私そのものです。

もしそうならば、私のように多くの人達に助けられて、今を生きるそのままを、この樹にも授けてあげたいと思います。

しばらく、私と一緒にこの羽生で暮らします。

来年の秋、どのようなになってくれるか?頑張ります!


盆栽を業として生きる皆さん、これは私の教訓です。

私たちプロは、日々多くの盆栽を世に送り出します。

そこには忘れえぬ名木もあれば、数えきれぬほどに扱ってきた数多の樹々もあります。

しかし、その樹を家族として迎えた愛好家の方々にとっては、どれもがかけがえのない唯一の名樹なのです。

盆栽ひとつで、人の輪が広がる・・この事を是非心に刻んでいきたいものです。


記録的猛暑の続いた今夏、それでも9月になると、朝夕の空気は何処となく涼んできたように思います。
今年の「中秋」名月は
9月10日
この季節になると、“月“ の掛物を使いたくなります! 
先日、名匠・木村正彦先生の創作的作品「八房桧寄植え」を譲って頂きました。

IMG_2109
名月にはいつも“ススキ“を取り合わせますが、今回はこの盆栽を使いました。
掛物は江戸期の名筆、土佐派の大家、土佐光孚の三幅対のひと幅。

IMG_2110
蔵にしまっておいた、木彫家・田中一光先生に十数年前お願いして作って頂いた“ウサギ“のつがいを脇飾りに使う事を決めていたので、
“木彫のウサギ“に、単幹の名木などは合わず、「深林」を感じるこの寄植えを主飾りにすることにしました。

IMG_2111
“里山の森林の上に浮かぶ煌々とした名月、足下には野うさぎの雌雄”  時にはススキ以外の中秋も面白いものです。

IMG_2108
因みに、木村先生のこの作品は、普通の桧素材だと、このように細やかな枝姿にならないそうで、
八房系のこの素材を手に入れる事が、とても難しいそうです。

【7,000万の出来高❗️】

日本水石協会の文化事業を応援する業界組織として、仕組みを新たに開催されたオークション。
本来は東京盆栽倶楽部で行うイベントでしたが、昨今のコロナ拡大を配慮して、
少しでも換気の良い広い会場という事で、私達羽生雨竹亭での開催となりました。

IMG_2087
事務局を預かる私の周りは、名匠木村正彦先生、主催代表の小林國雄先生、業界を代表する皆さんが、全国から集って下さいました。
一般の業界オークションと少し違うのは、水石協会の活動援護の意を知って、
蔵深くに眠り続けている名石・名水盤が盆栽群と共に、表舞台に見る事が出来る事です。

今回も、“天下五剣“の筆頭として名高い国宝「三条・三日月宗近」を国立博物館に惜しげもなく寄贈された、
名家が旧蔵していた紅鞍馬石の絶品「若草山」や、銀象嵌の名器「鍋長楕円水盤」など、息を飲む品々!

IMG_2088
そこへ木村先生など、盆栽界の宝とされる作家の盆栽作品群!

IMG_2089
5,000円ほどの愛らしい石から、数百万の名樹まで、朝8時に開始されたオークションは、
気が付けば、終了の手締めがされたのは薄暗くなる黄昏時になっていました。

盆栽以外の競りすべてを担当した私は、今朝も声が出ないほどでした💦
でも、こんな時期に予想を超える参加者と出来高、仲間の心意気に感謝!感謝の1日でした。

↑このページのトップヘ