雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴45年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”


昨年、秘匿の内に四国鬼無から羽生に移送した五葉松の巨木素材群。
奈良時代からの旧家「神高総本家」と、鬼無盆栽界の恩人、小西翁から受け継いだ五葉松約150点。

今春、トレーラーを連ねて移送して、数ヶ月をかけて鉢入れした中の、“これは将来の宝“と見定めた樹の大改作を始動しました。

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小手先の枝掛けでの“見た目だけの手入れ“をせず、10年後の名樹への想いを込めて、
1日1点の計画で樹の限界ギリギリのジャッキ曲げなどを駆使しての仕事です。

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私も含めて、“明日売れるもの“に走りがちな現在の盆栽界。
だからこそ、次の時代に残すものを造り、そのプロセスを若いスタッフ達に経験させようと思いました。

しかし、大型の“つわもの達“。
簡単には言う事を聞いてくれません。

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友人の改作の名人、寺川穂積氏の協力を得て、第1作が仕上がりました。
四国五葉松らしい、堂々とした力強さの表現を活かした樹相、勿論ひとつずつ、樹の持っている特性と表情は違います。 
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“こうしたい“と言う自分の我を出し過ぎずに、“樹に教わる“つもりで、この冬は少しずつ仕上げていこうと思います。
とにかく大きいので、幹や枝がみしみしと骨が折れる程の曲げ込みをした樹達は、
厳寒の季節を屋外にはおけず、寒風や低温を避ける必要があります。

また、“ハウスを作らなければ“・・スタッフ達の苦労が目に浮かびます。
でも、数年後、この樹達が見せる勇姿をみんなで見たいものです。


11月も間もなくすぎる中、盆栽庭園も最後の紅葉に、庭のもみじも、盆栽達も競う彩りをみせています。
“北山時雨“が降り始める季節、訪れる冬の前、樹々達は今年の秋の終わりを謳い上げるように鮮やかな色を輝かせてくれています。

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そしてそんな中でも、美しい翠を湛える松の盆栽達。
これから訪れる凍てつく京都の冬、その中に見る松や真柏、松柏類の“常盤の緑“は、命の力強さを感じさせてくれます。

コロナが静かになってきた今、訪れて下さる方々も増え、庭園や各盆栽達の説明に追われる時が多くなりました。

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でも、初めて“ホンモノの盆栽“をご覧になる人達に、その素晴らしさを伝えている時間、私は大好きです。
ここで、そんな事をずっとしていられたら、どんなに豊かな毎日でしょう!
雑木盆栽の葉落ちの季節、のんびりしていると、冬前の枝先の“抑え切り“のタイミングを失ってしまいます。
相変わらずの慌しい毎日です!


盆栽展での“賞レース“的な世界とは違う、盆栽水石の座敷陳列と言う、古来よりの“しつらえ“形式で、
趣味を通して、更に深い美意識を希求する事を目的とした愛好会として、多くの趣味家が知る、玄虹会。
その年に1回の展示も、13回を数える展覧となりました。

コロナ禍の中でも、昨年は3月の春季展、今年は晩秋の飾りを行いました。


会場は、第1回よりご理解を頂く、京都臨済宗名刹「大徳寺」の最大塔頭『芳春院』。

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本堂・書院・そして文化財と言える茶室「迷雲亭」と「落葉亭」。
格調高い名樹をはじめ、玄虹会ならではの味わい深い文人調の盆栽、圧倒的な水石群。

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特に床の間5席は、単に掛物を合わせるにとどまらず、席が表現する内面的な“席趣“まで掘り下げた意味を潜ませています。

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海外の盆栽水石のレベルが格段に高くなってきた今、私達日本人が求めた、盆栽や水石の単体の持つ素晴らしさだけではなく、
“空間全体を捉えた総合的な世界観“を、飾りに創り上げることが、これからの盆栽水石趣味の大切なものではないでしょうか?

その意味でも、この玄虹会は、未来への提言にもなる「失われつつある日本の文化」を示しているように思います。


【内閣総理大臣賞に五葉松「百万石」❗️】

コロナ禍で昨年は40年の歴史の中で、初めて中止になった同展。
やっぱり晩秋の古都を彩る盆栽展として、私も二十代から携わってきた催事、
こうして独特の雰囲気を肌で感じれば、早く日常の社会に戻って欲しいものだなあ、と思います。


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設計、企画、を任された、田中財団の国風賞・内閣総理大臣賞・受賞樹のみで構成した特別展示も、
構想を立てた通りに完成し、財団所有の五葉松「百万石」も狙い通り、内閣総理大臣賞を受賞出来ました。

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また、お得意様達の展示もそれぞれ全席受賞となり、ホッとしています。

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明日よりの売店は、会社のスタッフにある程度任せて、京都市長の案内役、大徳寺の庭園案内、
そして趣味家の最高峰の団体「玄虹会」の年に1回の展覧『玄虹会展』の開催運営進行に注力したいと思います。

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でも、いまだ収まらないコロナ禍の中での開催、出品や売店出店もどうなるか?不安視する声もありましたが、開けてみれば、従来通りの状態。有難いものです。



以前より極秘裏に進められていた盆栽業界のシークレットニュース!
著名盆栽愛好家、廣瀬幸夫氏の愛樹(共に国風賞受賞樹)が、京都盆栽財団「慶雲庵」に、譲渡されました。


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2点とも、日本盆栽界を代表する名木、そこには盆栽をこよなく愛する大家同士ならではの“未来の盆栽界“に対する真摯な心がありました。

“自然の芸術作品である盆栽、愛情深き所蔵者と、熟練の腕を持つ盆栽師、
この両面が揃わなければ、時の流れの中で、価値なきものになってしまう“。

盆栽の真髄を体現してきた廣瀬氏の真実の言葉。


“自分の棚場での愛玩は、その盆栽達の歴史の中での一時の出来事、
名樹は志を同じくした人たちによって、その歴史を含めて受け継がれるもの”

古希を過ぎた大家の多くが、同じ思いを持たれています。
海外を含めた、名盆栽の所有意欲は、今までの盆栽界の在り方すら変える勢いが目立つ今です。
廣瀬氏と交友深い「慶雲庵」オーナーの田中慶治氏、“日本の歴史ある盆栽の保護伝承“を目的に創設した財団法人。
共に盆栽を人生後半生の道標とされた大家。

“命あるもの、持つに相応しい方があれば、金や評価は、プロに任せておけばよい”と廣瀬氏。


“未来永劫まで多くの人達に楽しんで頂くことが何より“と田中慶治氏の弁。

盆栽界の流通を正業のひとつとしている私などにとっては、口を挟むことすら失礼にあたる程の、「紳士と紳士の足跡」に、盆栽に生きる者のひとりとして、頭が下がる出来事でした。


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高く売ることより、持つべき人を得た廣瀬氏の安堵、受け継いだ名樹を後世に伝える責務に奮い立つ想いを持たれる田中氏。
お二人共にお付き合いをさせて頂く身として、胸に刻む感慨を得ました。
大観展でこの樹達と一緒にお会いできる事をお待ちしています!

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