雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴45年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”



季節の早さに、応接室の盆栽飾りも、追いかけられるような今年。
早めの藤の席飾りをしました。

IMG_3210
IMG_3211
滝のような艶やかな花姿を見せる一盆。
陽春を謳いあげる「揚げひばり」の掛物。

IMG_3212
IMG_3213
眼下には、春の山野草“丹頂早“が、瑞々しい葉色と可憐な花を咲かせています。
「藤に雲雀に山野草」まさに“麗かな春“を席中に観られる花物盆栽の好例です。



そしてもうひとつ。
千葉県に住する旧知の目利き古老より最近譲り受けた藤。


IMG_3214
IMG_3216
“こんな藤の盆栽があったんだ“と、感嘆した一樹です。
どれほどに長く鉢で持ち込めば、このような老幹の味になるものか、

枝までもがそれぞれに揺れ下がる様は、まるで琳派や水墨画の中にある景色。


IMG_3215
IMG_3218
名筆・望月玉泉の「雲月図」、花物でありながら、“幽玄“と言う世界観が醸しでる樹には、
“春の盆栽“と言うことよりも、この樹が持つ「韻」をよく感じさせてくれる空気感を描いてみようと思いました。

脇には苔の“あしらい“のみ。


IMG_3217

くずや石・添景・等々、考えましたが、
何かを取り合わせることで、そこに観える世界を固めてしまいそうで、敢えて何気ないものとしました。
宵闇に咲く数輪の花を付けた山藤、﨟たけた樹が語りかける情趣は、なにものにも替え難いものです。
盆栽は、種類も多種ならば、同じ樹種が描き出す席中の雰囲気も、まったく異なる世界が
樹によって現出されます。
これが盆栽趣味の醍醐味ではないでしょうか!


早春の梅から暖かな日差しの中の桜たち。
季節の移ろいを“先取り“するように、盆栽たちは私達に自然の美しさ・素晴らしさを謳い上げてくれます。
温暖化のせいでしょうか?
桜も私が小さい頃は、入学式の時にはまだ満開かはらはらと散り始める姿の記憶がありましたが、今年は4月の初めには既に散り始めました。


藤も然り。


IMG_3201

まだ三越銀座店にいた頃は、ゴールデンウィークの頃が見頃だったのですが、
この調子だと、それまでに艶やかな花姿は峠を超しそうです!


新緑のもみじも、今が盛り!


IMG_3202
IMG_3203

透けるような瑞々しい葉色は、いつ見ても良いですね❗️
そんな事をのんびり思っていたいのですが、この頃になれば、追いかけっこをするように、
芽摘み・新芽切り・に腰の鋏が欠かせません。
芽切り鋏・ピンセット・そして・・植替えの山・山・山・‼️
雑木盆栽はとうに峠を過ぎていますが、ここから残りの五葉松、追いかけるように真柏・黒松・赤松・が続きます。
我が稼業は、自然の移ろいと共に生きるのですが、自然が背中から押しているようです(笑)


【蘇る「蒋介石水掛けの松」❗️ 庭園大入替え❗️】

開園記念の特別展示を終えて、2日間の休園の後、禅林の庭内は、
ここから始まる時を共に刻む新しい“仲間達”を迎えました。

IMG_3045
赤松・銘「群鶴」、蒋介石が愛蔵した歴史を持ち、貴重盆栽にも登録されている、文化遺産と言える日本盆栽界の赤松名樹です。
長く羽生の庭内で培養の時の中にいましたが、この庭園の開園に合わせて、
名匠木村正彦先生にお願いして、広がりすぎていた樹姿を、往時のように、幹芸が見えるように、“しめ込んで“ 頂きました。
鉢も誠山の長方から、中国宜興で誂えた、この樹の為の鉢に植え替えての“上洛“!です。


IMG_3046
真柏・銘「乾坤の神龍」も、20年近く山採り素材の頃から手掛けてきた樹。
五葉松名樹「日暮し」の持つ樹相をどこか感じさせる私が大好きな樹です。


勿論、季節の美しさは何よりも大切。


IMG_3047

1年の丹精を経て、滝のように見事な花姿となった藤の盆栽。
透けるような爽やかな青葉の山もみじ。
この庭園は、伝承されてゆく日本の名盆栽はもとより、
美しい日本の自然が創り出してくれた、四季折々の移ろう“その時“を現す花物や葉物盆栽、そして何気無い山野草。
そんな世界をいつもご紹介してゆきたいと願っております。


【開園記念展・木村正彦・小林國雄・鈴木伸二・井浦貴史・各先生に感謝!】

「百年の初め」に相応しい日本の名樹を集めた開園記念展が無事に終わり、
ここより、長く続く「芳春院盆栽庭園」が静かに始まります。
日本を代表される盆栽作家の皆さんが、私の想いにご協力下さって、
ご本人を代表する盆栽を、この庭園の“柿落とし”に華を添えてくださった事は、生涯忘れません。

IMG_2889
IMG_2898
禅の聖地である大徳寺、“茶聖“千利休と三千家の墓所、戦国大名の塔頭群、その中心に造られた盆栽庭園。

ここから、この庭と盆栽達を守り訪れる多くの方々に、盆栽と水石を伝える事が、私の62才よりの務めとなります。

盆栽はどちらかと言えば、狭義なマニアのものとして、戦後豊かな趣味として発展しましたが、
造形美や“作る・育てる“と言う楽しさが、前に出て、古来よりの盆栽に対しての美意識・美学、
と言うような世界観を愛好家や世の中に伝える部分が、疎かになりがちでした。
この庭園が、禅や茶の湯と言う、日本文化の根幹を成す象徴的な地に創設されたことで、
初めてここで盆栽水石をご覧になる方々の意識を、更に文化的な視点で感得していただける事を願っています。

設立者である芳春院ご住職の「開園に際して」の言葉に、
盆栽は「自然のどこにでもある仏性」の象(かたち)として作り出され、「生きる禅・哲学」である
とする言葉を頂いた事は、この庭園に携わる事になった喜びです。
7日より、連綿と続く「芳春院盆栽庭園」が、時々の盆栽を入れ替えながら始まります。
静けさに包まれた禅林の地で、佇むように盆栽達とゆっくり会話を楽しんでいただける事を願っています。

IMG_2899


盆栽庭園を預かって、2週間近い刻が過ぎました。
掃除・草取り・水掛け・雑木の芽出しの手入れ・来庭される方々の応対・・!
1日があっという間に過ぎてゆきます。
その中でも、ここをお預かりする時、
私なりに盆栽水石を多くの方々に伝えるひとつの仕事としての「座敷飾り」の妙を、ここで実践することです。
庭内にも「通玄庵」に床席を造り、今回は赤松の三幹と滝石を飾りました。

IMG_2828
文人樹形の名作として、大家、塩月翁から現代の名手、矢内信幸氏に受け継がれた樹です。
鉢も飴南蛮の名器。
このような樹こそ、鉢も贅沢に、それでいて目立たぬものを使いたいものです。
脇に雪解けの清流が飛沫となる滝石を配する事で、松柏盆栽が描き辛い季節感を出してみました。


庭園に隣接する塔頭「龍泉庵」は、大徳寺の中でも歴史深い塔頭名。


IMG_2829

書院に飾ったのは、桧の三幹。
飄々と揺れたつ姿が見所のこの樹は、戦前の大家によって作られた「高明山焼」

IMG_2830
僅かな奥行にこれだけの三幹を植え込むには、技量もさることながら、持ち込みによる根の仕上がりが必要です。
まるで明治の大家達を魅了した“飾らぬ逸樹”を見ているようです。

IMG_2832
掛物は、名手、長澤蘆雪の「雲月図」
横物であることが、床の間の空間を壊さずにいます。

IMG_2831
添えに、田中一光師の「蓮に白鷺」
十数年前、一光先生に依頼して制作していただいたもの、細い脚を含めて、この作品は、一木から掘り出されたものです。
その姿から、蓮の上に立つ「白衣観音」の化身に見立てています。


次の間には、加茂川の遠山石。


IMG_2833

練れた味わいは、百年を越える愛玩によるものです。

IMG_2834
2尺を越えるこの年代の遠山加茂川石は、とても貴重です。
掛物は、菊池容斎「雪月花」


IMG_2835
IMG_2836

真黒の石に季節感は出ませんが、月にかかる散り桜の花びらが、過ぎゆく季節を謳っています。


大徳寺の中は、今日も静寂に包まれています。
ここにいると、まるで刻が止まったかのような錯覚を覚えます。
庭を守り、盆栽を守り、訪れる人達に私が出来る事を伝え、そしてこのような飾りの世界観を伝えて行けたらと願っています。

↑このページのトップヘ