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盆栽歴45年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

【名盆栽 紅冬至梅の飾り】

国風展の慌しさの合間に、羽生の床の間を飾る古木。
戦前より盆栽界に受け継がれてきた名樹「紅冬至梅」 昨年天界に逝った盆栽大家・小泉 薫 翁 が、生前大切にしていたもの。
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小泉先生との二十歳の頃からの半世紀近いお付き合いの中で、私の別のお得意様の所有となり
「私が庭におくレベルではないので、森前さんのそばにおいてあげて下さい」と言う現蔵者のお気持ちで、
今年も羽生の庭で楚々とした花姿を見せてくれています。
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松に代表される盆栽、なぜでしょう?梅はその松にも負けない厳とする雰囲気と早春の兆しを現す象徴になっています。
名樹と合わせた「冬朧の月」の掛軸。
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雪空に霞む月は、明けやらぬ春を待っています。
脇には楓の寄植え。
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まだ寒樹の相を見せる木立の数々は、吹く風に肌を刺す冷気が残っています。
人はいつかは『白玉楼の棲人』となります。
還暦を超えると“あの方も逝ってしまった”とため息をつくことが多くなります。
それでも 盆栽は生き続けます。
不思議にその人の面影を残して。
そして徐々に 次の持主の貌へと姿を変えてゆきます。
私のもとにあって、この古樹はいつかは 私のような姿になるのでしょうか?
次なる姿が、故人たちに恥ずかしくないよう、身を律して修練の毎日を送らなければと、非力浅学を恥じるばかりです。
自分より齢を重ねた老樹を見ると、「お前は何でそんなに頑張って生きているのだろう?」と いつのまにか、心が樹に問いかけています。
きっと死ぬまで 問い続けるのでしょうね。

今回充実の内容!!

前期展に続いて、国風展の後期展も無事に終わりました。
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今回の展覧は、近年の中でもでも充実したレベルだったと思います。
さすがに50数点の秀作が、残念ながら落選して出品できなかっただけのものでした。
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ただ私の個人的な感慨ですが、還暦を過ぎて日本盆栽界の頂点にある国風盆栽展を振り返って思うことがいくつかありました。
ひとつが 羽生の庭にも時々いらっしゃる八十路を目前の老愛好家が、今年国風展に残念ながら落選された事です。
勿論 審査の方々の 席数による当落はやむを得ない事だと思います。
ただ、この方も私のお客様と言うわけではないのですが、昨年まで9回連続で入選され、今年出展されれば10回連続による協会表彰を迎える方でした。
「え!彼の方が落選したの?」と耳を疑いましたが、
樹の内容の如何は別にして、愛好家として温厚で心優しい方の残念な結果には、心が痛みました。
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不肖 私も盆栽協会の代議員のひとりとして、以前の総会でも
「長年 盆栽界に尽くされた人品素晴らしい愛好家の方々には、当落という制度とは別に、枠を設けて 扱い業者を含めての“事前審査”みたいな形で、長年の功労を含めた席を限定して用意出来ないか」
と問うた事があります。
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私は盆栽というものは、本来 人が良い悪いというものを審査して判断するものではなく、愛好家としての品格、
出入り方のその方への名誉や審美をお手伝いする責任を何よりも大切にすべきと思っております。
盆栽協会の筆頭として、理事長職を奉職される青蔭先生などは、愛好家としても、
古刹を預かる僧籍に身を置かれる方としても、奢らぬ心優しい品格あるその姿を尊敬するばかりです。役員の方々のご苦労も、代議員になり本当に良くわかります。
私はどちらかといえば、人情に弱い方なので、公的な場における判断の難しさには向かないと思います。
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展示されているすべての盆栽は、どれも立派で ここの選に漏れた作品も おそらく僅かな点差だったのでしょう。
何か愛好家の皆さんが、みんな喜んでくれる形があればいいものですね!

いつも思います。私達 プロは、日本盆栽界の専業者としての「あるべき姿勢」をいつも自分の中で糺していないといけないと。

【後期展へ!】

令和初の国風盆栽展も 前期展が終わり13日から後期展となります。
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今回は 宮内庁より名樹「君が代」と 尾張焼の名器が出陳され、花を添えています。
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私見ではありますが、今回の展示は この数年の中で一番レベルの高いものになったと思います。
それぞれの樹の完成度・樹格・古色・久しぶりに “さすがは国風展 ”といった感です。
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大型名木の部門でも最高賞の「国風賞」は、比肩する樹が多くあり、中品部門・小品部門に至っては、私から見れば どれもが国風賞でした。
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後期展では、羽生雨竹亭の盆栽教室に通う 小学校6年生の清水ちえりちゃんが、史上最年少で国風展に入選しました!
受験で大変な中、一生懸命手入れをして見事に夢を叶えましたので、皆さんも是非ご覧になってください!


【岐路に立つ 盆栽業界の在り方・売店の格差鮮明に】

日本の盆栽界最大のイベント「国風盆栽展」が8日開幕しました。
これに併せて 上野グリーンクラブでは、国風展に併催した売店「立春盆栽大市」が同時に始まりました!
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北海道から九州まで、全国の有数盆栽園が、同所に出店しています。
今回は「コロナウィルス災禍」の影響で、アジア特に中国からの本展来日が10%まで減少するという異常事態と言える大市となりました。
この5~7年、業界の販路は 大きく中国盆栽界に頼っています。
極端に言えば業界の年間取り扱い高の50%以上が中国と言っても過言ない程です。
特に全国の優良樹が集まるこの催事は、中国客の動向で悲喜交々の数年間だった事も事実です。
しかし、今回は初日を終えた中でも、中国愛好家・バイヤーは 僅か!
「当てが外れた!」と嘆く盆栽園の多いこと!
私の店も 勿論多くの中国からのオーダーに応える数年でしたが、私は以前より 後輩たちに
「どんな時も日本の愛好家を大切に!はじめは小さなお付き合いでも一生のお付き合いの出会いとしての国風展であるように!」
と、目先の商売に囚われて“大切なもの”を見失うことのないように伝えてきたつもりです。
今回は、その姿勢に対する明暗がはっきりと浮かび上がりました。
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おかげさまで、小店は 幅広いジャンルの皆様にお応えで知るような品揃えと、
盆栽教室・国風展出品等の皆様との交流の会「玄虹会」などの活動をさせて頂いている事で、初日も多くのご用命を頂戴しました。
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100軒を超える出店盆栽園、中々 目が開かない(販売が叶わない)店も目立ちました。
私の下で10年の刻を過ごし独立した子も出店を片隅で出させて頂きましたが、当初より
「目の前にいらっしゃる愛好家の方に 自分の“分”をわきまえた素直で丁寧な応対を」
の申し付けに従ってくれたせいか、初日で350万という商いとなったようです。
その子に言いました。
「見てごらん。これだけの店が軒を連ねているが、並んでいる盆栽や品物を見て “これはあの人の店”とわかる店がどれほどあるか?」
大切なのは、売れるなら何でも扱う、ではなく「私の描く店はこんな店です」と、自分と愛好家を繋ぐ 特色が必要だという事です。
どんな店も 全部を叶えられる店はありません。
それぞれの店の色を好まれる愛好家の皆さんが、自分が望む店を選ぶのです。
ある中堅業者が言いました。
「売れないなあ、中国がもっときてくれればいいのになあ」と。
心で思いました。
“ 自分を振り返って足元をもっと見て”と。
16日まで、ここから 日々の出会いが始まります。
お金も物もお客様も、何もなかった20数年前の銀座店を開いたあの頃を思い出します。
街ゆく人が小さな店に入って下さる喜び。
その時かけた 今も同じの言葉を。
「盆栽はご存知ですか? 盆栽はお好きですか?」そこから始まるのです。


8日から開催される「国風盆栽展」 
私達エスキューブも 例年通り 上野グリーンクラブで併催される『立春盆栽大市』に、会場二階に最大ブースを設けます。
あと数日の今、飾る盆栽達の最後の仕上げ準備に追われています。
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今年は コロナウィルスの関係で、購買欲の強い中国愛好家の来日が、昨年比で10~20%にとどまると予想されます。
各同業者も“どんな動向になるものか?”と、成り行きに不安を隠せませんが、私は ある意味で この状態を良しと捉えての機会と思っています。
恥ずかしながら、日本盆栽業界は 昨今 中国人の盆栽買付の動向に振り回されているように見えます。勿論 商売ですから 誰を相手としても頑張ることは良いのですが、「中国人はどうなのかな」
・・この言葉をオークションでも普段でも何処でも聞きます。
“ 私達はブローカーなのか?盆栽業として園を預かるプロなのか?” 日本の大切な愛好家の方々を蔑ろにしている感が 私にはずっとあります。
愛好家と語り合い、共に盆栽に対して向上する姿、修行時代から それこそが盆栽園を営む者の在り方と思って来ました。
今回の国風展売店は、色んな意味で、私達プロに 「自分達はお客様とどの様にあるべきか?」を 改めて振り返るものになってほしいと願っています。
勿論 国を問わず 海外各国の方々が、日本の盆栽の素晴らしさを楽しみにいらして下さることは大歓迎です。
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プロよ! ブローカーならず!盆栽園の主人たれ!

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